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 webnews 08/06/12 (木) <前へ次へindexへ>
2個目のカップは逃したけれど。
AFC女子アジアカップ3位決定戦 オーストラリア女子代表vs.なでしこジャパン(日本女子代表)

2008年6月8日(日)16:00キックオフ ソンニャット競技場 観衆:1,200人
試合結果/オーストラリア女子代表0−3なでしこジャパン(日本女子代表)(前0−1、後0−2)
得点経過/[日本]永里(17分)、宮間(79分)、澤(87分)


取材・文/西森彰

 逆転で敗れた中国戦は、もったいないゲームだった。

 格付けが済んだ後に、あれほどムキになって行かなければ。サイドの選手への対応を間違えていなければ。死んでいた相手の左翼に攻勢をかければ。そして決定機のほとんどすべてが得点に結びつくほど中国がツイていなかったら……。

 サッカーというスポーツにおいてはよくあることなのだが、逆転負けを喫する過程には、いくつもの「タラ、レバ」があった。

 良薬は口に苦い。

 忘れられたら、どれだけラクになることか。結果論で済ませれば、どれだけ傷つかずに済むか。それでも、佐々木則夫監督と選手たちが、ビデオ映像から目をそらすことはなかった。ひとつひとつのプレーを検証し、修正点を話し合った。



 紅白戦形式の前日練習でもプレーを止めて、約束事を確認する場面が再三のように見られた。一失点目のきっかけとなったスローイン時の守備、二失点目の原因となったサイドの選手への対応、サイドチェンジのタイミング……。2日前のゲームを落とすきっかけになった部分は、特に時間を割いた。

 サイドの守備は、2列目の選手が相手をタッチライン際に追い込み、サイドバックが前に詰めて縦を切る。高い位置でボールを奪えれば、当然ながらそれだけ相手ゴールにも近い。攻守一体で戦う、このチームの基本だ。

 だが、試合の中では、どうしても寄せが遅れる局面も出てくる。中国戦では、2列目の選手が戻ってくる前にサイドバックが勝負を挑んだ。そして深く飛び込んでは交わされ、そこが失点のきっかけとなった。

 この日、佐々木監督が伝えたのは、ディレイしながら、守備組織を整える方法だった。サイドチェンジやカウンターなどで、囲い込みに行けない時のやり方が示された。リスクを冒してボールを奪うのではなく、突破されないだけのセーフティーな距離を置く。

 例に挙げられたのは、右から左にボールを振られた後の宮間のポジション取りだったが、これは「他のポジションにも応用の効く話」(佐々木監督)である。中国戦で苦い思いをした左サイドバックふたりの頭をクリアにするための佐々木監督ならではの配慮だったと思う。

「サイドチェンジされた時にプレスが間に合わない。その時にふたりの間を突かれるという現象が、中国戦では見られた。『慌てないで』と。まだ最終ラインもいるし、2列目もいるし、GKもいる。『落ち着いて対応しよう』ということです」(佐々木監督)



 その一方でサイドチェンジの不足については、この部分で主たる担当者・阪口瑞穂が火だるまになった。「さっきから、同じサイドでプレーしてばっかりだろ。もっとピッチ全体を見ろよ。誰がサイドチェンジするんだよ。オマエだろうが!」。強い口調で容赦ない指摘が浴びせかけられる。

 泥臭いプレーをするのはカッコ悪い。高い技術を持っているだけに、そんな天才肌のプレーヤーに見られる。キプロス合宿で心身ともに相当絞られ、本人の意識も変わってきた。中国戦では、歯をくいしばって、遥かに前を行く相手選手を追いかけるシーンも見られた。

 それでも、周りのチームメートは、試合に入れば自分の持てる力以上のものを出し尽くそうとする選手ばかり。ひたむきさを発露し続けるなでしこジャパンでは、まだまだファイティングスピリットが不足している。もっともっと良い意味でエモーショナルな部分を出せるようになってほしい。厳しい言葉からは、そんな愛情も感じ取れた。



 そして迎えた3位決定戦。スターティングメンバーには主力組の11人が入った。中国戦からは腰の打撲で出場を見送った安藤梢が復帰し、GKが海堀あゆみに変わっただけ。中間のトレーニングでは、準決勝に出ていないサブ組のメンバーも、悪くない動きを見せていた。銅メダルを狙うだけなら、フレッシュな彼女たちを出すほうが近道だったと思う。

「オリンピックでも中2日で試合がある。こういうのを何回か味わっておいたほうがいい。主力組にコンディションが悪い選手がいるので、数人、入れ替えるかも知れない。主力組を組織化して、そこに先の選手を入れていくのが目標だけれども、今の段階ではひとつの形を浸透させたい」(佐々木監督)

 しかし、佐々木監督は、五輪までの残り時間も考慮に入れ、3日前の課題を克服することを選んだ。



「試合の立ち上がりは、硬くなったピッチ、相手、自分たちの体の重さの3つの要因が重なって、うまく試合に入れなかった」

 佐々木監督は、序盤をそう振り返った。オーストラリアは中盤のGARRIOCKが上下動し、3ライン、ダイヤモンド、そしてボックスと目まぐるしくフォーメーションを変えてきた。日本も澤穂希がGARRIOCKの動きに対応し、4-4-2と4-1-4-1を使い分けながら、戦っていく。

 2週間弱で5試合をこなす強行日程と、30度を掲示したベトナムの夕刻。それらを考え合わせれば、殺人的な試合運びである。この我慢比べで、根負けしたのはオーストラリアだった。

 17分、日本が中盤でのパス交換から、いったん近賀ゆかりにボールを戻す。その時点で、オーストラリアの選手たちの緊張感が弛緩した。その瞬間に永里優季が、素晴らしい動き出しを見せて、ロングボールを呼び込む。完全にフリーになった永里は、GKの飛び出しを見ながら、その頭越しにループシュート。シューターは突進してきたGKのアフタータックルで倒れたが、ボールはそのままゴールに転がり込んだ。

 この1点でゲームバランスは、日本に大きく傾いた。



 佐々木監督就任後の公式戦8試合(東アジア選手権3試合、アジアカップ5試合)の全てで先手を奪っている。問題はこの後のゲームコントロールだ。この日のゲームでは、気象条件も踏まえて無理攻めを自重し、ボールをキープしながら、上手く息を入れた。

「今日は中国戦と似たような状況になった。(中国戦では)そこでリズムを崩していたので、中間のトレーニングやミーティングでかなり修正した。攻撃が好きな選手が多いので、攻めに行っていたところもあったけれども、今日は池田(浩美)を中心にして、バランスよく戦っていた。中国戦の経験が活きていたのだと思います」(佐々木監督)

 オーストラリアは、俊足FWのDE VANNAがひとり奮闘するだけ。後半に入ると、さらに動きが鈍った。警戒していた圧倒的な高さも、セットプレーの場面自体が少なく、怖さはない。センターバックのSALISBURYを前線に上げてパワープレーを狙おうとしたが、ロングフィードの出所を叩かれて、すぐに手詰まりになる。

 攻め手を封じた日本は、阪口を中心にサイドチェンジを織り交ぜ、相手を振り回してスタミナを奪った。さらに終盤には、宮間あやのフリーキック、大会MVPに輝いた澤穂希のシュートで追加点。終了間際に訪れたピンチも、ゴールを守った海堀が好セーブを連発し、無失点で切り抜ける。3対0。スコアどおりの圧勝だった。



 カウンターやサイドチェンジにも落ち着いて対応できた。ゲームコントロールも上手くいった。3日前のゲームの反省点は、きちんと修正されていた。

「(中国戦でも)今日のような試合ができればね……。こういう天候だから、序盤に体が動きすぎて、後でガクッとペースが落ちることがある。新しく入ってきた選手にサイドを破られることもある。二度とああいうことが起きないように、我々スタッフも選手も、お互いに学んだと思う」(佐々木監督)

 キャプテンの池田も「優勝はできなかったけれど、いい大会だった」と振り返った。二ヵ月後の大目標に向けた課題の洗い出しと修正。それをある程度までは達成したのだ。心残りは、優勝した北朝鮮と世界レベルの試合ができなかったことくらいである。

 アジアカップ? 五輪が終わるまで、お隣さんにしばらく預けておくだけのことだ。


(オーストラリア女子代表) (日本女子代表)
GK: BARBIERI GK: 海堀あゆみ
DF: POLKINGHORNE、CARROLL(57分/PERRY)、SALISBURY、REUTER DF: 近賀ゆかり、池田浩美、岩清水梓、柳田美幸
MF: CHAPMAN、COLTHORPE、GARRIOCK、MCCALUM(75分/ MASTRANTONIO) MF: 安藤梢、澤穂希、阪口夢穂、宮間あや
FW: DE VANNA、GILL(67分/MCSHEA) FW: 大野忍(H.T/荒川恵理子)、永里優季(84分/丸山 桂里奈)
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