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 webnews 08/10/05 (日) <前へ次へindexへ>
ボールが止まるピッチは、一度はまったら抜け出すことができない
新潟、あと一歩が及ばず。兵庫、貫禄の逆転勝ち
第63回国民体育大会サッカー競技(女子) 準々決勝 兵庫県vs.新潟県

2008年9月30日(火)13:30キックオフ(35分ハーフ) 三光総合運公園多目的広場 観衆:300人 天候:雨
試合結果/兵庫県2−1新潟県(前0−1、後1−0、延前1−0、延後0−0)
得点経過/[新潟]上尾野辺(14分)、大谷(66分)、大石(75分)


取材・文/中倉一志

 三光総合運動公園多目的広場で行われた準々決勝の第2試合は前大会優勝チームの兵庫県と、昨年度は三重のまえに準々決勝で敗れた新潟が対戦した。兵庫はTASAKIベルーレの、新潟はアルビレックス新潟レディースの単独チーム。ともに、なでしこリーグDiv.1で鎬を削りあう間柄で、ほぼベストメンバーの布陣で大会に臨んでいる。兵庫が狙うのは大会2連覇。新潟が目指すのは、成長の証として結果を手に掴むこと。互いに絶対に譲れない試合だ。

 新潟の布陣はいつもの4−4−2。早い段階で、上尾野辺めぐみ、牧野愛美、中島未来の前の3人にボールを預け、高い技術と攻撃センスに任せるのがスタイルだ。そして兵庫の布陣は4−3−2−1。中盤の底に白鳥綾が構えて、そのやや前、左右に控えるのが山本絵美と阪口夢穂の2人。両サイドに大谷未央と大石沙弥香が開き、1トップは田頭陽子が務める。走力を活かして、最後まで諦めずに喰らいついていくサッカーが身上。そこに阪口の巧みなボール捌きがアクセントを加える。



上尾野辺(赤・10)の柔らかなループシュートは天下一品
 しかし、そうした両チームの戦い方以上に、ピッチ状態が試合に大きなえ影響を与えた。振り続ける雨の中、試合を重ねるごとにピッチコンディションを悪くなるばかり。両チームのベンチサイドから見て右側は泥田のようになってボールは全く転がらず、ここにボールが入ったら最後、攻める方も、守る方もどうすることもできない。反面、左側のピッチは比較的状態が良く、特にベンチ側の半分は雨の影響が最も少ない。したがって、攻めようとすれば、ベンチ左側の手前4分の1のスペースを使う以外にない。

 両チームが選択できる戦術はふたつだけ。右へ攻めるときは、リスクを回避するために、とにかくボールを泥田の中へ放り込んで、自分が何もできない代わりに、相手にも何もさせないこと。そして、左に攻めるときに、唯一、ゴールへ結び付けられる可能性がある左サイドにボールを集めて、ゴールへの糸口を見つけ出すということ。技術、戦術の争いというよりも、そのふたつを我慢強く徹底できるかが勝負を分ける最大のポイントだった。いつものサッカーにこだわれば、墓穴を掘るだけだった。

 そして前半、左へ攻める新潟がピッチの状態を生かしてゴールを奪う。時間は14分。左SBの山本亜里奈からのアーリークロスを川村優里が頭で落とし、そのボールを牧野愛美が上尾野辺めぐみへとつなぐ。このとき、兵庫にわずかな隙が生まれ、ボールに詰めるのが遅れた。その一瞬を上尾野辺は見逃さない。左足から放たれたのは柔らかいタッチのループシュート。そのボールはゆっくりと、しかし確実にゴールネットへと吸い込まれていった。そして試合は1−0で新潟がリードしたまま後半へと折り返す。



粘り強さと、どんな体制からでもゴールを狙う特長を随所に発揮した大谷(青)。貴重な同点ゴールを決めた。
 今度は左に攻めるのは兵庫。「粘り強くやったら点は取れるだろうと思っていた。後半は、特に左サイドを中心に攻めることを徹底した」(仲井昇監督・兵庫)。兵庫は大谷を前線にあげて布陣を4−4−2に変更。そして、その大谷が左へ流れてボールを引き出して攻撃の起点を作る。一方、新潟が選択できるのは、前半の兵庫同様、なるべく早く相手陣内へボールを放り込むこと。どちらが徹底できるか。それが勝負の行方を決める。

 意図した形からチャンスを作り出す兵庫。粘り強く守って大きくボールを蹴り出す新潟。ともに一歩も引かずに時間が経過していく。その流れに変化が見えだしたのは、残り10分を過ぎてから。新潟に守ろうという意識が高まった。ここぞとばかりに一気に仕掛ける兵庫。そしていくつかの決定機を外した後の66分、ゴール前にこぼれた新潟のクリアボールに猛然と大谷が突っ込み、GK齊田由貴と交錯しながらボールをゴールへと押し込んだ。兵庫らしい粘り強い、そして大谷らしい泥臭い、しかし、貴重なゴールだった。

 そして、試合は延長戦へ。ここからは消耗戦だった。しかし、消耗戦は兵庫の望むところ。時間の経過とともに走力の差が顕著になり、兵庫が試合をコントロールする。そして75分、昨年の決勝戦で兵庫を優勝に導く貴重な先制点を挙げた澤田由佳が、今度は決勝ゴールをお膳立てをする。左サイドから斜めに走り込んできた大石へ絶妙のラストパスを送ると、大石の右足が、ゴール上段、右隅を捕らえた。これで勝負あり。兵庫は危なげなく時間を使って、準決勝進出を決めた。



さすがの阪口(青・中央)も、あくコンディションの中では、そのテクニックを十分に活かせなかった。
「う〜ん、これが現実です」。試合後、奥山達之監督に声をかけると、一瞬の間をおいて言葉が返ってきた。その間が新潟の悔しさを物語る。勝利した兵庫も、敗れた新潟も、雨という環境の中で、最悪とも言えるピッチコンディションの中で出来うることはすべてやったことは間違いない。その点において、両チームに差はなかったと言っていい。これもサッカー。そうとしか表現のできない試合だった。せっかくの国体という舞台での戦い。雨はともかく、もっと違ったコンディションの中で戦わせたかった。諸事情はあるだろうが、あまりにもピッチコンディションが悪すぎた。

 さて、兵庫は第54回大会で初優勝を飾って以来、9年連続して準決勝以上に勝ち上がってきたが、その記録を10年に延ばした。難しいコンディションの中でも、どこか落ち着いた、貫禄のようなものを感じさせられたのは、10年の歴史の積み重ねのなせる技かもしれない。「準決勝進出はノルマ。2連覇を狙いたい」と仲井監督。準決勝では昨年度4位の岡山県と対戦する。








(兵庫県) (新潟県)
GK: 齊田由貴 GK: 大友麻衣子(69分/諏訪江利乃)
DF: 甲斐潤子 池田浩美 下小鶴綾 佐野弘子 DF: 詫間美樹 田中桜 東山真依子 山本亜里奈
MF: 山本絵美 白鳥綾 阪口夢穂 MF: 中村早樹(43分/井上光保) 江橋桂 川村優里 上尾野辺めぐみ
FW: 大谷未央 田頭陽子 大石沙弥香 FW: 牧野愛美(61分/口木未来) 中島未来
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