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 webnews 08/11/01 (土) <前へ次へindexへ>
「ヤング・なでしこ」がもたらした衝撃
FIFA U-17 WOMEN'S WORLD CUP NEW ZEALAND 2008 グループC 日本vs.アメリカ

2008年10月30日(木)12:00キックオフ ハミルトン/ワイカトスタジアム 観衆:人
試合結果/U-17日本女子代表 3−2 U-17アメリカ女子代表(前1−1、後2−1)
得点経過/[アメリカ]ディマルティーノ(3分)、[日本]岩淵(31分)、[アメリカ]ラディッシュ(51分)、[日本]亀岡(68分)、吉岡(74分)


文/中倉一志

 試合終了間もなく、FIFA公式ホームページにアップされたのは「日本、優勝候補を倒す」という記事。素晴らしいパフォーマンスを見せた日本が、優勝候補のアメリカを3−2で破ったことは、今大会で最も大きな驚きだと報じた。アメリカが敗れたという驚きはもちろんだが、それ以上に、日本が見せたサッカーの内容に世界中が驚いたと解釈するのは、さすがに自国贔屓過ぎるというものだろうか。

 しかし、日本が見せた高い技術と高い戦術眼を備えたサッカーは、スピードとパワー、個人の強さを前面に出した欧米の女子サッカーとは全く質が違った。そして、技術でアメリカを上回り、高い戦術眼で面白いようにアメリカの守備を崩した。しかも、その戦術眼は、パワーとスピードを補うためにチーム戦術を徹底した類のものではなく、あくまでも個人の自由な発想に支えられたもの。奥が深く、そして更なる伸びしろを感じさるサッカーに、世界中が驚いたとしても不思議ではない。

「今大会.1との呼び声が高かったアメリカに勝つことができて非常に満足している。でも、多くの方たちは驚かれているかもしれないが、私はこの勝利に驚いてはいない」(吉田弘監督・日本)。これが日本ブランド。吉田監督の言葉はそう主張しているように聞こえた。



 立ち上がりの日本は心もとないものだった。嶋田千秋と亀岡夏美のダブルボランチは、マークすべき相手とスペースを絞り切れず、GK中村沙樹と最終ラインの連携も不安定でプレーがはっきりしない。そして3分、左サイドからのアメリカのロングスローを跳ね返そうとした岸川奈津希が相手との競り合いで転倒し、こぼれたボールを中村がファンブルし、他の選手がボールウォッチャーになるというミスの連鎖から、あっさりと先制点を奪われた。明らかに硬さが見て取れる不安だらけのスタートだった。

 しかし、その流れを15歳の日本のエース・岩淵真奈が変えた。タイミングのいい動き出しで前線でボールを引き出し、屈強な体を寄せてくるアメリカDF陣の圧力をものともせずに、高い技術を駆使してゴール前でリズムを作る。その動きに触発されて、日本は本来の姿を取り戻していく。そして13分、島田の右足から放たれた強烈なミドルシュートがクロスバーを叩いた。そして、これを合図に日本はアメリカを圧倒する。

 前線を自由に動き回ってゲームを作り、そしてゴールを狙う岩淵。そこへ吉良知夏、齊藤あかねの2人が絡んで、盛んに前後左右のポジションチェンジを繰り返してアメリカの最終ラインを翻弄する。中盤の底でタイミングよくボールを左右に配るのはJFAアカデミー1期生の亀岡夏美。日本の圧倒的な攻撃力の前にアメリカのラインが下がると、島田千秋が強烈なミドルシュートを放つ。日本は次から次へと決定機を作り出していく。

 そして、いくつかの決定機を逃した後の31分、日本が同点に追いつく。島田のミドルシュートがクロスバーを叩いて跳ね返ったところに、誰よりも早く反応した岩淵が左足でゴールネットを揺らした。その後も、一方的に攻撃を仕掛ける日本。優勝候補筆頭と呼ばれるアメリカに全くサッカーをさせなかった。



 アメリカが前に出てきたのは後半に入ってから。試合の立ち上がり同様に、プレー選択が曖昧な日本のDFラインにプレッシャーをかけて主導権を奪いに来る。そして51分、ラディッシュが放ったミドルシュートは平凡なものだったが、動きの逆を突かれたGK中村は、これを防げず。再びアメリカにリードを許す。その後も守備のプレーの選択がはっきりしない日本は、しばらくの間、自陣でのプレーが続く。それに乗じてスピードとパワーを生かしたストロングスタイルで前へ出てくるアメリカ。日本にとっては一番苦しい時間帯だった。

 だが、日本はこのままでは終わらなかった。65分前後、攻め続けたアメリカが攻撃の手を緩めたところを見逃さずに、すかさず前へ出る。再びボールが回りだす日本。日本が攻撃のリズムを刻めばアメリカを押し込むのが難しくないは前半で実証済みだ。そして日本は同点に追いつく。時間は68分。25メートルを超えようかという地点から放った亀岡のロングシュートが見事にゴールを捉えた。相手が下がれば、ミドルレンジの正確なシュートを放つのも日本のパターン。ワールドクラスのスーパーシュートだったが、それも狙いのうちだったろう。

 勝ち越しゴールは、その6分後。右サイドから岸川が上げたダイアゴナルなロングボールを、ファーサイドで待ち受けていた斎藤が頭で中央折り返す。そのスペースへ入ってきたのは、69分にピッチに登場したばかりの吉岡圭。DF2人に挟まれながらも、巧みな胸トラップでボールを足元にコントロール。右足から放たれたシュートがゴールネットを揺らす。ピッチを大きく使った展開からの完璧なゴールだった。そして、強引に前へ出ようとするアメリカの攻撃を抑えて、日本は勝利を手にした。



 スコアは1点差だったが、堂々と戦った日本の力勝ち。それも大会関係者を驚かせた要因のひとつかも知れない。連動性に優れた組織的なサッカーと、長い距離からでもゴールを狙う力強さを兼ね合わせた内容は見事だった。そして一躍注目を浴びたのが岩淵。この年代では、日本国内では突出した実力を誇っているのは既に知られるところだが、そのプレーが世界のップクラスにあることを示した。10月31日、FIFA公式ホームページでも「Japan's Mana from heaven」とのタイトルをつけて、岩淵に対する驚きを紹介している。

 もちろん、すべての面で合格点が与えられるわけではない。課題は相手を受けたときの時間帯の過ごし方。2失点は、いずれもブレーの選択がはっきりせずにミスから喫したものだったが、DFラインとGKの連携や、ファーストディフェンダーがはっきりしなかったり、相手との距離を詰め切れないなど、守備面にはいくつかの問題を抱えている。しかし、この年代は次へステップアップする発展途上の時。課題を意識して変に小さくなることなく、ありのままの自分たちの姿を思いきりぶつけてほしい。

「この年代では日本の技術は世界トップクラス。それが段々と、体力、スピード、体の強さなどの面で差が表れてくる。そういう理由で、なでしこもアメリカやドイツに勝ちきれないでいるが、それでも技術なら世界でトップクラス。だから、むしろ他を圧倒するくらいの技術を身につけて上へ送り込みたいと思っている。今大会では技術的な面で世界に対抗しようとしているので楽しみにしていてください」。大会前、TV局のインタビューに対して答えていた吉田監督。次の対戦は2日に行われるフランス戦。日本が起こしたサプライズは、まだまだ続く。


(U-17日本女子代表) (U-17アメリカ女子代表)
GK: 中村沙樹 GK: バンシル
DF: 千葉梢恵 千葉望愛 岸川奈津希 竹山裕子 DF: ブルックス コロハン クウォン
MF: 井上由惟子(69分/吉岡圭) 嶋田千秋(59分/田中陽子) 亀岡夏美 齊藤あかね MF: ジュリア・ロバーツ ティムラク(32分/エディ) K.ミューズ ラディッシュ(52分/クレイ) S.ミューズ(86分/ジョンソン)
FW: 岩淵真奈 吉良知夏(91分/浜田遥) FW: ベルー ディマルティーノ
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