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 Road to Beijing 07/04/10(火) <次へindexへ>
北京オリンピックへ向けて、新たな戦いが始まった。
Road to Beijing: 北京への新たな戦い。まずはベトナムを下して無難なスタート
アジア女子サッカー2008最終予選(北京オリンピック2008最終予選)第1節 
日本女子代表vs.ベトナム女子代表

2007年4月7日(土)16:04キックオフ 国立霞ヶ丘陸上競技場 観衆:4,157人 天候:曇一時晴
試合結果/日本女子代表2−0ベトナム女子代表(前1−0、後1−0)
得点経過/[日本]澤(36分)、酒井(73分)


取材・文/西森彰

 メキシコの低酸素環境で力を出し尽くした選手たちを待っていたのは、所属チームでのハードトレーニングだった。リーグ開幕まで1、2ヶ月の時期にプレーオフで2週間、五輪予選で2週間も主力を失う、なでしこリーグの各チームは、その間に挟まれた1週間にできる限りのことをせざるを得ない。なでしこジャパンの主力を多数含む日テレ・ベレーザがグァムキャンプへ向かったのをはじめ、他のチームもプレシーズントーナメントへの参加や練習試合でギアを上げて来た。

 その結果、北京五輪を目指す最終予選序盤の2連戦に向けて、合宿地に再集結した選手たちの動きは重かった。ハードワークを課すのが常の大橋浩司監督でさえ、代表合宿の序盤は「疲れが溜まっている選手が多かったので軽めにした」。合宿2日目の月曜日に20分間×4本で行われた、なでしこチャレンジプロジェクトとの練習試合でもいきなり先制点を食らった。その後、意地を見せて立て続けに2点を奪い返したものの、当時のコンディションはおそらく底に近かったと思う。

 先発メンバーのうち、DF登録は安藤梢、磯ア浩美、豊田奈夕葉、宇津木瑠美の4人。安藤、宇津木は後方からビルドアップができるし、豊田の高さはセットプレーで活きる。そしてベンチのサブメンバーに眼を向けても、MFを兼用できる近賀ゆかり以外にDFは岩清水梓がいるだけで、アタッカーが揃っている。

「コンディション的なものもあります。そして、より攻撃的なメンバー、攻撃的なポジションを選択しました」。記者会見で選択基準を答えてくれた大橋監督の言葉が、このゲームで課せられた問題を全て言い表していた。すなわち「チーム状態が良くない中で、いかに確実に勝ち点3(できれば大量得点)を奪うか」である。



 この日のゲームは前述の4人のうち、安藤が右ウイングバックの位置に入る3−5−2で立ち上がった。序盤こそ、ベトナム最終ラインのウラへFWが走り込んだり、ボランチからロブを落とし込んだり、相手の布陣を下げさせるためのジャブが見舞われた。だが、次第に手詰まり感が増していく。「いつもより1列前だったので、ドリブルなどで仕掛けやすかった」という安藤が、再三、深い位置まで突破するが、中の選手と呼吸が合わなかったり、ラストパスの精度を欠いてゴールへは繋がらない。

 ベトナムがブイ・ティ・ティット・マイの1トップだったこともあり、15分過ぎからは実質2バックに近い4−4−2へシステムを変更した。安藤と宇津木が高い位置から組み立てに参加し、「ノッキングの状態に陥った」と感じた宮間あやが、極端にサイドへ開いたり、あるいは最終ラインの裏を狙ったり、フリーマン的な動きを見せて守備の綻びを探る。それでも得点は生まれない。

 3週間に渡るトレーニングで、ゴ・レ・バン監督が鍛えぬいたベトナムのディフェンスを褒めるべきだろうか。4人のDFと5人のMFがコンパクトな2本のラインを形成し、そのゾーンに入り込んできた日本の選手にプレッシャーをかける。30分過ぎには、ブイ・ティ・ティット・マイの頑張りから、あわやのシーンも作り出していた。

 集団の努力を粉砕するのは、しばしばそれを凌駕する圧倒的な個の力である。36分、頼れる澤穂希のゴールが生まれた。右サイドから上げた安藤のクロスを荒川恵里子がヘディングで落とす。これを胸で完璧にトラップした澤は左足を思い切って振り抜いた。それまで日本の攻撃をはね返してきたバリアを突き破るきれいなクリーンシュート。ベトナムのゴールネットが揺れた。

 試合前に専門誌編集部のIさんが「宇津木と荒川でとったメキシコ戦の先制点は、フランス大会のフランク・デ・ブールからベルカンプとつないだゴールに被りましたよ」と言っていたが、この澤のシュートも、ミシェル・プラティニがトヨタカップで魅せたプレーを思い出させる、ファインゴールだった。

 最低限のハードルをクリアした日本は、後半に入ると相手の疲れもあってボールが回り始める。そして、73分、近賀の右FKを前線に上がっていた豊田が頭で折り返す。リバウンドを狙っていた酒井與惠がボレーシュートを放つと、バーの下を叩いてベトナムゴールに入った。この追加点で大勢は決した。



 澤の先制点直後、起点となるクロスを入れた安藤がベンチに下げられ、近賀ゆかりが出場した。「前半、早い時間帯に交代してしまったので悔しい気持ちで一杯です。チームに戻ってから調子が良かったし、調子が良いまま合宿にも臨めていた」という安藤の出場は、僅か37分間で終わった。彼女のデキ自体は決して悪いものではなかったと思う。

「2点目をとれば、さらに攻撃的に行けた。リスク管理を考えていたことはある」という大橋監督のコメント。そして「交代後、佐々木コーチからは『高い位置を取るのか、受けるのか。もっと自分で主導権握ってプレーしろ』と言われました」という安藤の回顧。このふたつを並べれば、安藤が積極的に前へかかることでその後方に放置されたスペースが、ベンチのスタッフには危険に見えたようにも思える。

 追加点を必須条件として2バック気味に高いポジションを維持するのならともかく、勝ち点3に徹する戦いをするなら、上下動のスピードと運動量で勝る近賀でスペースを埋めておくという選択は頷けなくもない。ホームでベトナムが相手。見る側としては「大量得点でのスタート」を期待してしまうが、ベンチとしては無理をする必要を認めなかった。

 合宿中からこの6試合を「たぶん、最終節までもつれると思います」と、控えめに語っていた大橋監督。私はその見立てを消極的と捉えていたが、これについては指揮官の認識が正しかった。もう1試合のスコアは韓国0−1タイ。「日本、韓国のマッチレース」という大方の予想は、第1節にして、早々と崩れ去った。

「(韓国が0対1で敗れた)結果については、特に驚きはなくて『そういうこともあるかな』とは思っていました。選手にも『決して1チームだけがライバルではない。3チームともオリンピックに出るために、必死になってくるぞ』と、キャンプの段階から言っています」(大橋監督)



 会心のゲームではなかったが、現状を考えればまずまずのスタートだ。来週末には、すぐ首位決戦が待ち受ける。アウェーゲームで韓国を降したタイは自信と勢いをつけている。「今日のベトナム以上に、こじ開けるのに苦労すると思う」と磯ア浩美。加えて疲労回復、暑熱対策など、コンディション面の課題も多い。その中できっちりと勝ち点3を奪えるか?

「ホームでも、アウェーでも勝ち点をとらなければいけない。それをこのチームのテーマとしてやってきた。『ボールも人も動くサッカー』を目指してきたけれども、この間のメキシコのように人が動けないところでも戦わなくてはいけないし、勝たなくてはいけない。その準備はしてきた」(大橋監督)

 すっきりと2連勝して、華やかななでしこリーグの開幕へ。タイからのグッドニュースを待とう。


(日本女子代表) (ベトナム女子代表)
GK: 福元美穂 GK: ダン・ティ・キウ・ティン
DF: 磯ア浩美、岩清水梓、宇津木瑠美(72分/柳田美幸) DF: グエン・ティ・ミン・グェット、ニュウ・トゥイ・リン、ダオ・ティ・ミュン、グエン・ティ・ゴク・アン(81分/ド・ティ・ハイ・アン)
MF: 安藤梢(37分/近賀ゆかり)、酒井與惠、宮本ともみ、宮間あや、澤穂希 MF: チャン・ティ・キム・ホン、グエン・ティ・キム・テュン、ドゥアン・ティ・キム・チ、トゥ・ティ・フー(H.T/グエン・ティ・マイ・ラン)、バン・ティ・タン
FW: 大野忍、荒川恵理子(84分/永里優季) FW: ブイ・ティ・ティット・マイ(H.T/レ・ティ・ホン・ガー)
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