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 第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
ベストメンバーで臨んだ浦和、静岡FCを完膚なきまでに叩く
第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 4回戦 浦和レッズvs静岡FC

2006年11月4日(土) 13:05キックオフ さいたま市浦和駒場スタジアム 観衆:13.636人 天候:曇のち晴
試合結果/浦和レッズ5ー0静岡FC(前2ー0、後3ー0)
試合経過/[浦和]田中(4分)、長谷部(22分)、ワシントン(46分)、田中(57分)、ワシントン(89分)


取材・文/砂畑 恵

「人間の身体なんですからリズムというのはすごく大切」(ブッフバルト監督)。天皇杯に於いてカテゴリーにかなり差のある相手に対し、サブ組や若手に実戦経験を積ませるというのも1つの考え方ではある。しかしリーグ優勝を視野に入れるブッフバルト監督はJ1のスケジュールが身に刻まれている選手の体内時計が乱れること嫌った。静岡FC戦を怪我人を除くベストメンバーで臨んだのはそういう理由からだ。

 折しも浦和は川崎と磐田とここ2試合、勝利から見放されている。浦和の面々は勝ちに飢えていた。立ち上がりから手を抜くこともなく、4分に田中が先制弾に始まり、89分にはワシントンと計5得点を挙げて、静岡FCを完膚なきまでに叩きのめした。



 この日、攻撃陣で最も光ったのは2得点1アシストの田中だろう。先制点は相手の攻めを跳ね返した闘莉王のヘッドに対して高田が被り、背後に落ちたボールを素早く拾ってループシュート。自身2ゴールとなった4点目はアレックスのクロスをGK金子が弾き、混戦の中で押し込んだ泥臭いゴールだ。そのゴール以上に圧巻だったのは89分にワシントンがゴールを挙げた場面でのアシスト。岡野からの足が長いスルーパスに対し、鮮やかに静岡FCの背後に駆け抜け、ワンタッチでワシントンのゴールをお膳立てするパスを出した。

 ただし、84分のようにGKと1対1でシュートを打たずにワシントンとのコンビネーションを優先した場面など、サポーターから「もう少し思い切ったプレーをしても」という声が上がってはいたが、いずれにしろゴールから遠ざかっている田中にとってこの活躍で僅かながらでも肩の荷が下り、プレーが吹っ切れれば浦和とすれば幸いだろう。

 それ以外ではリーグ戦同様に堅いディフェンスとそれを陰ながら助ける鈴木の献身的なプレーは健在。前半2得点で終わったチームに再び火を付けたワシントンの頭一つ抜け出るヘッドも相変わらず。それから抑えの効いたミドルで2点目を挙げた長谷部だが、日頃は肩に力が入り過ぎて枠を外すことも多いが、このシュートのように余分な力の抜き方を会得したとすれば言うことはないといったところか。

 しかし、浦和も万事OKとは言えないシーンもあった。68分、長谷部に代わってボランチに入った相馬と左サイドにいたアレックスがポジションチェンジ。ブッフバルト監督としては「アレックス、相馬、ネネも合わせて、3人の左利きがいるというところで一つの別の展開」というオプションを試した形であったが、同時間帯に岡野が足を吊るアクシデントでフィールドプレーヤーが減っていたとはいえ、ボランチに多少混乱が生じて静岡FCにペースを握られた。アレックスと相馬の併用は攻撃面では興味深い崩しもあったのは確かだが、守備面ではコンビネーションを深める必要性を感じた。



 さて、J1トップクラスの洗礼を浴びた形の静岡FC。三浦総監督は「浦和の選手が前に立った時に、自分達が試合の直前まで聞いていたことが出来なくなる」というように、相手が持つ風格に若い選手が押されてしまうといったことが起きたと話す。しかも駒場はJでも熱狂的な浦和サポーターが独特な雰囲気を醸し出し、静岡FCがファウルを犯せば容赦ないブーイング。山田将も「観客が多いから初めはそのムードに飲まれてしまった」と述べている。

 そんな影響からか、浦和のハイプレッシャーに慌ててしまい自陣でボールを失うことも少なくなかったし、フィジカル的にも果敢に競り合いにいっては浦和の選手に弾き飛ばされるシーンも散見された。5失点のうち、完全に相手に崩されての失点は89分のワシントンの得点だけで、ほとんどが静岡FC自身のミス絡みであったのも残念だった。とは言え、些細なミスさえも見逃さずに突き崩してくるのがJ1であり、それこそがプロなのだが。

 それでもチームとしての見所はあった。フリューゲルスで活躍した高田がまとめるディフェンスラインでは金が読みの良さを感じさせ、79分には下司の決定的なシュートシーンを演出した正確なクロスもあった。またワシントンをマークしていた山田将もハッとさせる攻撃参加を見せた。また、途中出場の河村もキープ力を武器にチームの攻撃を立て直し、チームはゴールにあと1歩のところまで迫ることも出来た。

 静岡FCは自分達のサッカーを浦和にぶつけ、そして散った。結果はともかく、その内容と姿勢には、敵将のブッフバルト監督はJFLでも十分やれるという印象を持ったようだ。それを知ってか知らずか、帰り際に山田将は次のJFL参入のかかる全国地域リーグ決勝大会の「FC岐阜が楽しみです」と声を弾ませていた。惨憺たる結果だったが静岡FCに植え付けられたもの。バスに乗り込む山田将の背を目で追う私の脳裏をパンドラの箱に残っていたという「希望」の文字が掠めて行った。


●三浦泰年総監督(静岡FC)記者会見
●ギド・ブッフバルト監督(浦和レッズ)記者会見


(浦和レッズ) (静岡FC)
GK: 都築龍太 GK: 金子芳裕
DF: 堀之内聖(HT/内舘秀樹) 田中マルクス闘莉王 ネネ DF: 松裏英明 山田将司 高田昌明 金淳昊
MF: 岡野雅行 鈴木啓太(62分/酒井友之) 長谷部誠(67分/相馬祟人) 三都主アレサンドロ 山田暢久 MF: 藤田雄馬 大内健(65分/河村優) 太田雄貴 日比康順
FW: 田中達也 ワシントン FW: 水野和樹 下司隆士
SUB: 山岸範宏 細貝萌 大山俊輔 横山拓也 SUB: 杉野三千義 石川貢 吉岡優 片山朗 大内真 深澤祐太
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