topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
清水、東京に競り勝って、今年もベスト8進出。
第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 5回戦  清水エスパルスvs.FC東京

2006年12月9日(土)13:00キックオフ 岡山県陸上競技場 桃太郎スタジアム 観衆:3,955人 天候:雨
試合結果/清水エスパルス3−2FC東京(前1−2、後1−0、延前0−0、延後1−0)
得点経過/[清水]高木純(5分)、[東京]増嶋(8分)、梶山(38分)、[清水]藤本(89分)、チョ・ジェジン(111分)


取材・文/西森彰

「桃太郎さん、桃太郎さん」と歌いながらスタンドに入場してきたのはFC東京のファン。岡山空港で大量に見かけた赤と青のコーディネート。今シーズン限りの引退を発表している三浦文丈は、リーグ、リーグカップの優勝経験はあるが、まだこの天皇杯だけは未勝利。東京サイドには「フミさんと国立へ」のフラッグも見られる。

 一方、主に陸路で静岡から岡山に乗り込んできたと思われるオレンジ色の清水エスパルスのファンたち。天皇杯は過去10回を振り返っても85回大会で優勝し、準優勝3回。ベスト8に行けなかったのは、大宮アルディージャとのオレンジダービーに敗れた、前々回だけと滅法強い。このクラブのファンにとって、年末年始はないも同然。元旦の決勝戦は、暖かい部屋の中でテレビを通して見るものではなく、寒風吹く国立霞ヶ丘陸上競技場で見るもの、なのだ。



 小雨が降る中、清水のキックオフで始まったゲームは、序盤から動く。5分、左サイドでボールを持った高木純平が、東京DFの寄せよりも速く、シュートを放つ。右足から放たれたボールは、GK・塩田仁史のセーブを逃れ、ファーサイドのポスト内側に転がり込む。この技ありゴールが熱戦の火蓋を切った。

 全選手が出足良くプレーに入っていた東京も負けてはいない。失点の3分後に得た左CKで、栗澤僚一の蹴ったボールを、ニアサイドで増嶋竜也が、完璧にあわせてあっさりと同点に追いつく。東京は、同点とした4分後にも、梶山陽平のクロスから、戸田光洋、ルーカスがシュートを放つ。清水GK・西部洋平の好セーブが目立つ展開は、裏を返せば完全な東京ペース。

 そして38分、右からのFKで栗澤のキックがバーを直撃。このリバウンドを梶山が蹴りこんだ。「いつもは(相手の)セットプレーを確認して来るんですが、今回はそれをして来なかった。不安が的中してしまった」と清水の長谷川健太監督。東京の選手は明るい表情で、清水の選手は暗い表情で、ハーフタイムを迎えた。



「前半は良く1対2で折り返してきた。3点目をとられていたら完全にゲームは終わっていた。西部のビッグセーブに救われた」という長谷川監督は、後半頭から、矢島卓郎を下げて、平松康平をピッチに送る。速いペースで敵味方の陣内を行き来する東京向きの流れが、平松のゆっくりとしたキープによって堰き止められ始めた。

「後半は清水がもっと積極的に、攻撃的に来るだろう。逆に自分たちがもう1点とれば、勝利がついてくる」。そう言って選手を送り出していた東京の倉又寿雄監督。清水に主導権を握られた後半にも、東京は栗澤、戸田、そして途中交代で入った川口信男らが、カウンターから決定機を迎えた。だが、その相手に止めを差すチャンスを、いずれも決めることができない。

 ロスタイム、途中出場の兵働昭弘が蹴ったフリーキックから混戦が生まれ、このリバウンドを拾った藤本淳吾が強烈なシュートで、東京ゴールに突き刺す。それまでセットプレーの場面でキッカーを担当していた藤本がゴール正面でポジションをとり、そこに注文どおりボールがこぼれた。天が与えた追加点の好機に、決め切れなかった東京にしっぺ返しが来た。

 延長戦に入ってからは、勢いに乗る清水にジャッジも流れ始める。107分、右から入ったクロスは滑り込んだDFの腕に当たって止められたのだが、穴沢努主審の判定はノーファール。これに救われた清水は、111分、藤本のFKから生まれた混戦でチョ・ジェジンの右足が一閃。両チームあわせて41本のシュートが乱れ飛ぶ、攻め合いに決着をつけた。



「こういう形で今シーズンが終わったことは残念です。最後にセットプレーでやられてしまいましたが、今年を象徴する失点だったと思います。来年に向けて、リーグを含めて失点をいかに減らすかというのが、これからの東京の課題だと思います」。既に退任が決まっている倉又寿雄監督は、今後の改善点を語って最後の記者会見を終えた。

 延長に入ってからは、勢いの差からか、ジャッジが相手に流れるケースも多かったが、この日の敗因はそこにはない。ペースを握っている時間帯に何度も訪れた、ゲームを決する3点目が奪えなかったことに尽きる。来年、再就任する原博実監督が、攻守両面で、どのようなテコ入れをしてくるのだろうか。

 勝った清水の長谷川監督は「最後は気持ちで押し切って、次に行くことができたと思います」。同点ゴールが生まれた瞬間、ほとんど同時に飛び上がったベンチのスタッフと選手の姿は、チーム一丸を体現していたように思える。

 戦術的な面では、長谷川監督の積極的な早目の交代策である。ハーフタイム明けの平松投入が、防戦一方の試合を五分の状態に戻した。また、岡崎慎司は相手の最終ラインを押し込む一因となり、兵働は同点ゴールのきっかけを作った。途中出場の選手たちがことごとく活躍した。やや後手に回った東京の選手交代と比べるとその差は歴然としていた。監督冥利に尽きる勝ち戦だったに違いない。

「天皇杯を勝ち上がっていくには、こういうゲームを拾っていかなくてはいけないと思うし、また、こういうゲームをして良い刺激を受けて、もっともっと良いトレーニングをして、強くしていかなければいけないと思います。今年は何としても天皇杯のタイトルをとりたいと思っています」(長谷川監督)

 昨年の悔しさを晴らすべく、このチームにとっては義務とも言えるベスト8進出を果たした清水。次の対戦相手は十冠に挑む鹿島アントラーズ。好ゲームを期待したい。


(清水エスパルス) (FC東京)
GK: 西部洋平 GK: 塩田仁史
DF: 市川大祐、平岡康裕、高木和道、山西尊裕(71分/兵働昭弘) DF: 徳永悠平、増嶋竜也、伊野波雅彦、藤山竜仁
MF: 伊東輝悦、藤本淳吾、枝村匠馬(50分/岡崎慎司)、高木純平 MF: 梶山陽平、今野泰幸、石川直宏(76分/川口信男)、栗澤僚一(105分/馬場憂太)、戸田光洋(96分/阿部吉朗)
FW: チョ・ジェジン、矢島卓郎(H.T/平松康平) FW: ルーカス
<前へ次へindexへ>