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 第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
福岡から駆けつけたサポーター。熱い心は変わらない。
勝ちパターンも決定力不足に泣いた福岡。
第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 5回戦 浦和レッズvs.アビスパ福岡

2006年12月16日(土)13:04キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:17675人 天候:晴
試合結果/浦和レッズ3−0アビスパ福岡(前0−0、後0−0、延前1−0、延後2−0)
得点経過/[浦和]ポンテ(93分)、ワシントン(108分)、永井(119分)


取材・文/中倉一志

 天皇杯5回戦までの1週間は、福岡にとっては難しい期間だった。J2降格の責任を取って辞任した監督。チームから離れざるを得ない選手。チームを出て行くであろう選手。そしてチームに残る選手。入れ替え戦での敗戦の意味が、1日、1日と重みを増す。重苦しくはないが、決して明るくはない雁の巣球技場の空気が選手たちに複雑な胸のうちを表していた。そんな中、布部陽功から檄が飛ぶ。「埼玉スタジアムというすばらしい環境の中でやれる試合。集中してやろう」。悔しさは前を向いて進むことでしか晴らせない。

「自分がどれだけ出来るのかにこだわってチャレンジして欲しい」(沖野等監督代行)。難しい中、選手たちはモチベーションをあげ、現有戦力で臨む最後の大会のピッチに足を踏み入れる。婦人はいつもの4−4−2。体調不良や、出場停止の影響で入れ替え戦のメンバーと若干の違いはあるが、誰が出ても力が変わらないのが福岡のスタイル。選手も、はるばる福岡から駆けつけたサポーターも違和感はない。そして右サイドのMFには、5月6日を最後に公式戦から遠ざかっていた宮崎光平が入る。



 立ち上がりは浦和にペースを握られた。福岡にしてみれば浦和が前に出てくるところを捕まえたいところだったが、高い技術でボールをキープする浦和にボールを取らせてもらえない。浦和がさほど攻撃的でないにもかかわらず、自陣内に押し込まれていくのは互いの地力の差が表れたからだ。しかし、浦和にはいつもの迫力がない。サイドを崩し、ゴール前まで迫っても、そこからの縦への力強さ欠けていた。やがて流れが福岡に傾き始める。

 この日の福岡は、左サイドの古賀を高い位置に残し、右MFの宮崎が中へ絞って3ボランチ気味で構える布陣。奪ったボールを古賀に集めて最大の武器を生かす。そして、宮崎が中へ絞ることでできたスペースへ、薮田光教、田中佑昌、宮崎らがポジションチェンジしながら飛び出していく。Jリーグ得点王のワシントンにはマークにつく川島眞也が仕事をさせず。浦和が放った決定的なシュートにはGK上山竜一がファインセーブを見せた。

 ボールを中心にして前後左右にポジションを修正し、中盤に形成した守備ブロックで相手を捕まえ、そこから攻守をすばやく切り替えてゴールを目指す。攻めあぐねる浦和。うまく守って効果的に攻撃を組み立てる福岡。福岡は自分たちが目指していたスタイルでペースを引き寄せる。ボールキープ率なら浦和。しかし、ゲームの流れは福岡のものだった。



現有メンバーで臨む対語の大会。福岡は様々な思いを抱えて戦う
 その流れは後半に入っても変わらない。時間の経過と共に浦和にミスが目立ち始めると、前へ出る積極的な守備でパスカット。そこからすばやく前へつないでチャンスを作る。そして65分を過ぎたあたりでは試合の流れを完全に掌握。何度もチャンスが訪れる。最大のチャンスは70分。高い位置で待っていた古賀にボールが渡るとGK都築龍太と1対1に。誰もがゴールを思い描いた瞬間、古賀の左足から放たれたシュートはクロスバーを越えた。

 福岡にしてみれば、この時間帯にゴールが欲しかった。ピンチには神山が再三のファインセーブを見せ、浦和がシュートを外し、そして浦和がリズムを崩したところを鋭く突いて攻撃を仕掛ける。試合運びは狙い通り。典型的なジャイアントキリングのパターン。必要なのはたった一つのゴールでよかった。流れからすれば、それで勝負は決まったはずだ。ところが、その1点が生まれなかった。決定力不足。というよりも点を取れるFWの不在。福岡は最後の最後まで、フロントにより放置された課題に泣かされた。

 狙い通りの戦いもゴールが生まれなければ勝負はつかない。そして試合は延長戦へ。だが、福岡には戦う体力が残っていなかった。細かなポジション修正と、球際での激しい競り合いは福岡から確実に体力を奪っていた。動けなくなっては、Jリーグチャンピオンの浦和に抵抗できるはずもない。ここから一方的にゲームを支配されると93分に遂に失点。108分、119分にも追加点を奪われて、終わってみれば0−3。そして福岡の2006年シーズンが終わった。



「やっぱり精度が足りなかった。けれども、内容を見ればわかるように、ちゃんとやれば彼らはできるということです。きちんとやることを決めて、それをしっかりやればできるということです」。試合から3日後、雁ノ巣球技場で沖野監督代行に声をかけると、そう言葉が返ってきた。浦和との試合内容、そしてこの言葉を聞いてフロントはどう思うのだろうか。J2に降格したとはいえ、天皇杯も含めて、終盤の戦いで見せた選手たちの必死の姿に心を打たれなかったものはいない。フロントも、その1人であったことを信じたい。

 さて、J2に降格したことで、これから様々なことがチームと選手に降りかかってくる。チーム運営に関して様々な制約も出てくるだろう。だが、J1復帰を目指すのなら、条件が悪いことを嘆くのではなく、与えられた環境の中で、どう工夫して足りないものをカバーするかを考え、そして実行しなければならない。「○○がないから」などと発言するようなら何も始まらないし、何も起こらない。それを肝に銘じて来シーズンを迎えたい。


●沖野等監督(アビスパ福岡)記者会見
●ギド・ブッフバルト監督(浦和レッズ)記者会見
●試合後の選手コメント


(浦和レッズ) (アビスパ福岡)
GK: 都築龍太 GK: 神山竜一
DF: 坪井慶介 ネネ 内舘秀樹 DF: 宮本亨(98分/釘ア康臣) 千代反田充(85分/吉村光示) 川島眞也 山形辰徳
MF: 平川忠亮 鈴木啓太 小野伸二(75分/永井雄一郎) 相馬崇人(104分/細貝萌) 山田暢久(64分/長谷部誠) MF: 宮崎光平 佐伯直哉 城後寿 古賀誠史
FW: ポンテ ワシントン FW: 薮田光教(70分/有光亮太) 田中佑昌
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