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 第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
札幌、J1クラブに3連勝で、初のベスト4進出。
第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝  ヴァンフォーレ甲府vs.コンサドーレ札幌

2006年12月23日(土・祝)13:02キックオフ ユアテックスタジアム仙台 観衆:5,537人 天候:晴
試合結果/ヴァンフォーレ甲府0−2コンサドーレ札幌(前0−0、後0−1)
得点経過/[札幌]オウンゴール(0分)、加賀(73分)


取材・文/西森彰

「私、堀井岳也は今期限りで現役を引退します。今まで僕を支えてくれた皆様、本当にありがとうございました。皆様からのご声援は、僕にとって一生の宝物です。10年間、本当にありがとうございました」

 挨拶を終えた堀井岳也が、まず右方向に、そして左方向に手を振る。それに応えるように、ヴァンフォーレ甲府、続いてコンサドーレ札幌のファンが、それぞれ堀井のコールを合唱した。この日対戦するふたつのクラブに所属していた彼にとって、最高の引退式であったかもしれない。

 冬の仙台にしては冷え込むというほどではない天気を含めて、針に糸を通すような確率で、こんな舞台が整った。堀井の所属する甲府は、リーグ2位の川崎フロンターレを破ってのベスト8進出である。札幌は、ベスト8に残った唯一のJ2クラブ。ジェフユナイテッド千葉、アルビレックス新潟を連破し、ユアテックスタジアム仙台に乗り込んできた。両チームに携わる人たちにとって「元旦・国立のチャンス」という思いはあったはずだ。



 引退式の和やかなムードを払拭するかのように、試合開始後1分も経たないうちに、いきなりファーストゴールが生まれた。相手ボールを奪った砂川誠が縦にボールを送ると、FWで起用された西谷正也が左サイドに流れて相手を引きつけ、そこから中央に折り返す。体ごと飛び込んだ中山元気が、処理を焦った甲府DFのクリアミスを誘い、オウンゴールとなった。

「1点目がすごくラッキーな形で入って、別にそれを守ろうとする気持ちがあってあれだけ押し込まれたわけではない。甲府がどんどん仕掛けてきたので、それに対応するためにマーク、カバーをとったらどうしても押し込まれてしまう。それはある程度分かっていたことで、選手の動き方もそんなに悪くはない。それでも甲府のほうが落ち着いて打開してきたので、ピンチはありました」(柳下正明監督・札幌)

 札幌に先制を許した甲府だが、もともと攻撃的な戦い方に特長のあるチームで、前節も川崎から5点を奪っている。全く焦る時間帯ではなく、普通に追いかければ良い。そのうえ、甲府の代名詞である3トップに対して、札幌の最終ラインは3バック。カバーリングが難しく、一般的なシステム論では相性が悪いとされている。

 しかし、この日の甲府は前線の3人をボールサイドに集め、互いに相手を使いながら狭い地域の突破を図ってきた。昨年までのイメージを持っていた柳下正明監督は「フロンターレ戦を見た時に『あれ?』っと。中に3人が入ってくるので、こちらも3人あるいは4人でしっかり守りなさい』と指示を出しました」。カバーリングの問題は、左右のウイングバック、そしてボランチをマークの受け渡しに参加させることで、解決を図った。

 甲府の前線は、敵味方が密集するエリアでも、前へ前へと圧力をかけてきたが「距離が近いので対応ができた。狭い局面で仕掛けてきたので、対応することができた」と柳下監督。札幌の厳しい守備に苦しんだ甲府は、ゴール前で何度か決定機を作ったが、バーやポストに嫌われ、どうしても得点が奪えない。

「前半は左サイドから崩せていたんです。崩した後の右側のサイドから出て行く選手がいれば、点が入っていたと思う」(大木監督)

「逆サイドへ大きな展開を挟まれていたならば、ウチも90分間はもたなかったんじゃないかと思う」(柳下監督)

 両監督ともボールサイドに選手が集中している状況で、サイドチェンジの有無が勝敗を分けたことを口にした。甲府にとって不幸だったのは、狭い地域での攻防でも優位に立ち、それなりにチャンスを迎えていたこと。バーやポストに嫌われるところまで辿りつけなければ、別のルートを探していたのだろうが…。

 後半もズルズルと狭い局面での消耗戦に追い込まれた甲府に対し、札幌は鋭いカウンターを見舞う。そして73分、カウンターで得た右CKの二次攻撃から、長身の中山に当てて最後は加賀健一。強烈なシュートが、甲府のゴールネットに突き刺さった。前半から苦しい守備を強いられてきたDFが、自らの追加点で大勢を決した。



 記者会見での大木監督の第一声は「完敗です。良いチャンスだと思ってここへ来たんですけれども、札幌には勝てませんでした」。「探検J1」をキャッチフレーズに戦い抜いた、甲府の2006年シーズンは終わった。資金力では劣るものの、意思統一された戦いぶりと、ホームでの温かい声援をバックにして戦い抜いた彼らは、リーグ戦では自動残留できる15位、そして天皇杯ではベスト8を勝ち取った。そう「勝ち取った」のだ。

「非常に良い経験をしたと思います。なぜか? 初めてのJ1で結果は15位、入れ替え戦のひとつ手前の順位で終わりました。これも実力と思います。今シーズンは終わりましたけれども、サッカーは続きますし、ヴァンフォーレも続きます。一番大事な次の試合、開幕戦に向けて、またできたこと、できなかったことをもう一度やって、もっともっと強いチームにしていかなきゃいけない。そう思います」



 そして、勝った札幌は、いよいよセミファイナルに挑む。クラブ初めてのベスト4について尋ねられた柳下監督は「あまり、ウチの選手がここまで来られたっていうのはあまりないんじゃないのかな。もちろんクラブの人たちも喜んでいるだろうけれども、一番喜んでいるのは選手たちなんじゃないかと思います」。

 ジュビロ磐田でも退任決定後の天皇杯で有終の美を飾った指揮官が、もう一度その快挙を演じられるかどうかは分からない。ただ言えるのは、負けたらその時点でオフに入れる現行のレギュレーションで、上位に進出するチームは、どこもひとつにまとまっており、その中に札幌も入っているという事実。時間をかけて着実に積み上げる、その指導力は十分に評価されて良いと思うし、彼が築き上げたベースキャンプは来年以降も引き継がれなければいけない。


(ヴァンフォーレ甲府) (コンサドーレ札幌)
GK: 阿部謙作 GK: 佐藤優也
DF: 山本英臣、秋本倫孝、津田琢磨、井上雄幾(68分/保坂一成) DF: 加賀健一、曽田雄志、和波智広
MF: 林健太郎、藤田健、石原克哉 MF: 藤田征也、大塚真司、芳賀博信、川崎健太郎、砂川誠(85分/金子勇樹)
FW: 倉貫一毅(75分/長谷川太郎)、須藤大輔(85分/宇留野純)、茂原岳人 FW: 中山元気(79分/石井謙伍)、西谷正也(82分/上里一将)
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