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| 第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 | <前へ|次へ|indexへ> |
終わってみれば神戸の順当勝ち。ディテールの差が勝負を分ける。
ホームズスタジアム神戸で11か月ぶりに神戸と福岡が顔を合わせた。
第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 4回戦 ヴィッセル神戸vs.アビスパ福岡
2007年11月4日(日)13:01キックオフ ホームズスタジアム神戸 観衆:3404人 天候:晴
試合結果/ヴィッセル神戸2−0アビスパ福岡(前0−0、2−0)
得点経過/[神戸]大久保(46分)、朴(54分)
取材・文/中倉一志
昨年の入れ替え戦を勝ち抜いてJ1の座を手にした神戸はリーグ戦で10位。数字の上ではまだJ1残留は確定していないが、復帰1年目としてはまずまずの成績。若い選手を中心に要所にベテランを配したチームは、J1に定着するにふさわしいチームに成長しつつある。そんなチームにとって、勝ち進めば川崎、浦和の強豪と戦える可能性のある大会は、チームの力を試し、経験を積むには恰好の舞台。そのためにも、まずは初戦となる福岡との対戦をしっかりと勝ち抜く必要がある。
一方、第48節の仙台戦に敗れてJ1昇格の目標を断たれた福岡に求められるのは、自分たちに与えられた環境の中で全力を尽くすこと。チャレンジすることに憶病な試合が目立った今シーズンだが、その克服なくしてはチームの成長も、J1復帰もあり得ない。天皇杯と残されたリーグ戦4試合の全てで勝利にこだわり、自分たちの力を出しつくすこと。それが新しいチャレンジへのスタートを切る唯一の方法になる。J1チーム相手に力試しをするのではなく、勝ちに行くことが求められていた。
福岡が勝機を見出すとすれば先制点が絶対条件。そして開始直後に、福岡はこの日のために蓄えてきた戦術を実行に移した。中盤をボックス型にした4−4−2でスタートした福岡だったが、最初のセットプレーでDF長野聡が前線に上がると、そのままFWの位置に留まらせた。そして最終ラインを3枚にして、中盤の底に城後寿、トップ下に布部陽功、アレックスを配した3−5−2へ変更。ロングボールを長野に当てて高い位置に起点を作ると、落としたボールを展開して神戸ゴールに迫った。
「前半に関しては、戸惑ったなかで試合を進める形になった」(松田浩監督・神戸)。福岡の戦術は狙い通りに神戸をはめた。高さに強い長野が前線の制空権を制し、落としたボールにアレックス、布部が絡み、中盤の底では城後がボールを捌く。アタックを仕掛けるのは左サイドの久永辰徳。ここのところ元気がなかった田中佑昌もサイドを駆け上がるシーンが見られる。ボール支配率で上回るのも福岡。時間のほとんどを神戸陣内で過ごした。
この日の福岡のスタイルは、足もとにつなぐばかりでスピードが上がらない中盤の活性化を促しただけではなく、守備面でも効果を表した。「神戸は守から攻への切り替えが速いチーム。特に大久保嘉、古賀らがいるため、カウンターがチーム戦術として使われている。できるだけ相手を自陣に抑えこみたかった」(リトバルスキー監督・福岡)。そして高い位置を保つ最終ラインは、裏へ抜けだそうとする大久保嘉人を何度もオフサイドに仕留めた。
福岡に対応するために神戸も4−4−2の布陣から4−3−3へ変更。しかし、福岡の最終ラインにプレスをかけ切れず、逆に空いたサイドを使われる羽目に。そして、止む無く4−4−2へ戻すなど、明らかに戦いぶりに戸惑いが見られる。J1のチームにとっては、トーナメント初戦にJ2のチームと戦うのは、ある種の難しさがつきまとうが、それだけではない混乱が生じていたことは明らかだった。
スタジアムのコンコースから見える風景。住宅地のど真ん中に立つスタジアムは、ある意味では奇跡ともいえる。
だが福岡には問題があった。いい形で突破してもクロスの精度が低く、あるいはクロスボールが入ってもゴール前への入り方が悪い。また、ボールの奪い合いの際の体の入れ方などで神戸の後手を踏み、肝心なところでのミスも多い。特にゴール前での力不足は致命的。これでは神戸を戸惑わせることはできても、慌てさせることはできない。チャンスを決定機に広げられない福岡にゴールの匂いはなかった。そして前半はスコアレスのまま終了。この時点で福岡のアドバンテージは消えた。
ハーフタイムを挟んで一息ついた神戸が落ち着きを取り戻すのは難しいことではなく、互いの間にある基本的な部分の差がゴールに結びつくのに時間はかからなかった。46分、朴康造からのパスを受けた近藤が裏を取って大久保へ。1本のパスで崩された福岡のDFをあしらうようにしてゴールネットを揺らす。さらに64分、古賀誠史からのサイドチェンジ1本でチェッコリの裏を取った朴康造が、飛び出してきたGK神山竜一の頭上を抜くループシュートを放って追加点を奪った。
これで勝負は決した。福岡は最後まで攻める姿勢を忘れずに久永が何度もサイド突破を試みるが、ゴール前でボールを合わせられなければゴールは遠い。そして神戸は冷静にプレーを進めて試合を2−0で終わらせた。
「ああやって蹴ってくるとは思ってなかったので、多少とまどいはあったが、よく辛抱できたかなと。もうちょっと早く対応できれば、もっと楽な展開になったと思う。でも前半は苦しいながらもよく守れた」(栗原圭介・神戸)。
「後半になっても焦る気配はなかったし、ばたばたしている印象もなかったので、その辺は経験しているなというのはあった」(布部・福岡)
この2人のコメントが、この日の試合を象徴している。今シーズンは1試合を通して安定した戦いができないことが多い福岡だが、この日は90分間にわたって戦術を徹底して遂行し、狙い通りの展開に持ち込んでいた。そして神戸は立ち上がりから集中力に欠き、自分たちのサッカーを表現することはできなかった。福岡は現在の力を発揮し、神戸は力を発揮しきれなかった試合だった。
それでもなお、互いの間にある基本的な部分、ディテールの部分での差は大きく、それが2−0という結果に表れたと言える。J1とJ2の力の差が感じられた試合だった。
| (ヴィッセル神戸) | (アビスパ福岡) | |||||||
| GK: | 徳重健太 | GK: | 神山竜一 | |||||
| DF: | 石櫃洋祐 北本久仁衛 河本裕之 茂木弘人 | DF: | 山形辰徳 長野聡 宮本亨 チェッコリ | |||||
| MF: | 栗原圭介 田中英雄 ディビッドソン・純マーカス(36分/朴康造) 古賀誠史(82分/酒井友之) | MF: | 田中佑昌(48分/宮崎光平) 城後寿 布部陽功 久永辰徳 | |||||
| FW: | 大久保嘉人 近藤祐介(67分/レアンドロ) | FW: | アレックス 林祐征(66分/久藤清一) | |||||
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