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 第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
広島意地の2発。J2降格ショックを振り切って準決勝へ。
第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝 FC東京vs.サンフレッチェ広島

2007年12月23日(日)15:04キックオフ 熊本県民総合運動公園陸上競技場 観衆:5148人 天候:曇
試合結果/FC東京0−2サンフレッチェ広島(前0−2、後0−0)
得点経過/[広島]柏木(13分)、駒野(37分)


取材・文/中倉一志

 福岡から九州自動車道を使って1時間半ほどで熊本県民総合運動公園陸上競技場が見えてくる。通称KKWING。1999年の「くまもと未来国体」の主会場として建設されたもので、熊本が誇るマラソンの父「金栗四三」の頭文字(KK)と、スタンドを覆う流線型の屋根を阿蘇山の大平原を飛び交う鳥の翼(WING)をイメージすることから名づけられた。収容人数は約32000人。第一種公認陸上競技場で、国際的規模のスポーツイベントにも対応でき、過去、ユース年代の日本代表の親善試合や、なでしこジャパンの国際試合が行われている。

 スタジアムに着いたのはキックオフ2時間半前。入場ゲートには開場を待ちきれないサッカーファンが長蛇の列を作っている。Jリーグが開幕して15年。サッカーが生活に身近なものになったとは言え、地方のサッカーファンにとってはトップレベルのサッカーに直接触れる機会は少ない。その数少ないチャンスである天皇杯を心待ちにしていたのだろう。来年度から、地元のプロ木ラブであるロアッソ熊本がJリーグ入りを決めた影響もあるのかも知れない。



 KKWINGで準々決勝を戦うのはFC東京とサンフレッチェ広島。「ルーカスが風邪をひいたということもあり、川口にボールを当てて、そこから裏を狙おうとした」(原博実監督)というFC東京の布陣は川口信男を1トップに置く4−5−1。トップ下に構える栗澤遼一がラインの裏へ飛び出し、左MFの鈴木規郎が中に絞ることで出来る再度のスペースを金沢浄が積極的に駆け上がる。試合は積極的な姿勢を見せるFC東京のペースで幕を開けた。

 対する広島の布陣は3−5−2。立ち上がりのFC東京の構成を凌いで10分当たりから反撃を試みる。最終ラインでのゆったりしたボール回しから前ランへフィード。こぼれたボールに柏木陽介、森ア浩司が絡む。狙いどころは、攻めに出てくるFC東京の右サイドの裏に出来るスペース。高い位置取りをする駒野友一に対して大あごなるパスを供給。目の前に広がるスペースを使って駒野がチャンスの芽を広げていく。いつしか試合の主導権は広島へと移った。

 その広島の先制点は13分。森ア浩のクロスボールが佐藤寿人を経由して柏木へ。ペナルティエリア左側でドフリーになっていた柏木の左足がゴールネットを捉えた。その後もゲームをコントロールするのは広島。FC東京はゴール前へ迫るものの、広島の守備を崩せずにペナルティエリアの手前でボールを回すだけだ。そして37分、左から柏木がドリブルで仕掛けて相手DFをひきつけて右サイドへラストパス。余裕を持って駆け上がってきた駒野がFC東京を突き放す2点目を奪った。



 攻めようとする気持ちが見えるFC東京だが、いかんせん前と後ろの連携がバラバラ。これでは厚みのある攻撃が出来ず、中盤に空いたスペースを使われて広島にゲームをコントロールされるのも当然だった。しかも、前半を終えて広島の2点のリード。ゲームはこのまま広島のペースで進むものと思われた。だが、広島は自ら戦い方を変えて押し込まれることになる。能力の高い選手を有しながらJ2降格の憂き目にあったのは、この当たりに問題があったのかも知れない。

 前半は高い位置から仕掛けることで主導権を握っていた駒野の位置が明らかに低い。広島が選択したのは5バックにして2点を守りきることだった。しかし、戦術的に守備を固めるというよりも、ただゴール前に人数をかけるだけでは守りきれるものではない。2点を追うFC東京が前から仕掛けてくる状況ではなおさらだった。次から次へと仕掛けてくるFC東京に対して、広島は場当たり的に近くの選手が守備に行くだけ。流れは完全にFC東京のものになる。

 しかし、FC東京は数あるチャンスを作りながらもゴールネットを揺らせない。66分に梶山陽平のシュートがポストを掠めたのを皮切りに何度も決定機を作り出すのだが、いずれも枠を捉えきれず。そのたびにスタンドから大きなため息が漏れる。結局、最後までその流れは変わらず。FC東京は準々決勝で姿を消した。



「後半、選手たちは最後まで諦めずによく闘った。1点取れば変わる、と思っていたが、点が取れなかった」とは原監督(FC東京)。そして、「シーズン後半、移籍や私の進退等の問題で、チーム内がバタバタしていた。そのためか、一人一人が『自分が頑張る』という気持ちが強すぎたように感じる。もっと味方を信じて走るようなプレーができればいいのに、『自分が』という想いがこもったプレーが多かった」と試合を振り返った。いくら積極的に出てもサッカーは11人でやるもの。チームとしての連携が取れなければ、ゴールは生まれないということだ。

 そして、J2降格という悲しみを振り払うように準決勝に駒を進めた広島。ペトロヴィッチ監督(広島)は「素晴らしい勝利だった。勝つべくして勝った内容。我慢できたし、試合もコントロールしていた。そしていいチャンスからいいゴールも決められた」と試合を評した。しかし、後半の戦い方は疑問符がつくもの。90分間を通してゲームをコントロールすることは容易なことではないが、もう少し違う戦い方があったのではないか。

「今はまだ降格のショックが残っている。だがチームは、そこで力を発揮し、素晴らしい試合を見せてくれた。失いかけていた自信を1試合ごとに取り戻している。G大阪にも勝って国立までたどり着きたい」と続けたペトロヴィッチ監督。果たして、意地を見せることは出来るのだろうか。


(FC東京) (サンフレッチェ広島)
GK: 塩田仁史 GK: 下田崇
DF: 徳永悠平 藤山竜仁 茂庭照幸 金沢浄(63分/ルーカス) DF: 槙野智章(75分/木寺浩一) ストヤノフ 盛田剛平
MF: 石川直宏 梶山陽平 今野泰幸 鈴木規郎 栗澤遼一(50分/浅利悟) MF: 駒野友一 森ア和幸(78分/高萩洋次郎) 服部公太 柏木陽介 森ア浩司
FW: 川口信男(50分/平山相太) FW: 平繁龍一(57分/高柳一誠) 佐藤寿人
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