topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
ラストチャンスへのチャレンジ。川崎が愛媛を降し、準決勝進出。
第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝 愛媛FCvs.川崎フロンターレ

2007年12月23日(日)13:04キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:8,484人
試合結果/愛媛FC0−2川崎フロンターレ(前0−1、後0−1)
得点経過/[川崎]大橋(43分)、ジュニーニョ(65分)


取材・文/西森彰

 天皇杯4回戦で浦和レッドダイヤモンズを降した愛媛FCは、続く5回戦で横浜FCを降した。J2所属チームとしては今大会唯一のベスト8進出を果たし、JFL所属のHonda FCと共にジャイアントキリングの魅力を伝えている。

 その愛媛FCを迎え撃つのは、川崎フロンターレ。クラブ史上初のビッグタイトル獲得へ向けて戦ってきた1年間だったが、ACL、リーグ戦、ナビスコカップといずれも手が届かなかった。この天皇杯は今シーズンで残された最後のチャンス。栄光への軌跡を見届けようと、スカイブルーの陣を布いている。



 前半はチャレンジャーの愛媛が川崎を揺さぶる。「前半15分までに点が取れたら」と先手を狙っていた愛媛の望月一仁監督。川崎の3バックを、田中俊也と内村圭宏の2トップが巧みに中央へ引き付けて、川崎のウイングバック裏にできるスペースを赤井秀一、江後賢一の両サイドハーフが狙う。愛媛の狙いを察した川崎の関塚隆監督は、森勇介、村上和弘に、相手のサイドハーフが攻めあがったら、これに対応して下がるように指示を出した。

「森のサイドで(危ない場面が)2度3度ありましたけれども、愛媛はセンターバックのカバーリングをなくすような2トップの動きを行い、そして両サイドからラインの裏を突破するような動きを狙ってきていた。左サイドはベンチの前だったので、村上に指示ができましたが、逆サイドは修正が遅れました」(川崎)

 11分、左サイドに飛び出した江後からの折り返しを田中がシュート。直後にも似たようなパターンで左サイドからのクロスに内村が飛び込む。川崎の守護神・川島永嗣が、好セーブと勇気を持った飛び出しでいずれのピンチも救った。

 徐々に落ち着きを取り戻した川崎は、チョン・テセ、ジュニーニョ、大橋正博の3人にボールを預ける。愛媛のサイド攻撃に押し込まれた両翼は、数えるほどしか攻撃参加できない。またノックアウト方式ということも脳裏にあったか、中村憲剛と谷口博之もバイタルエリアに注意を払って、前線のフォローが遅れがちだった。愛媛は、川崎のボールホルダーに対して2枚、3枚がかりの激しいプレスで応戦する。

 試合が膠着しかけた43分、川崎が一瞬のチャンスを活かす。愛媛ゴール前でボールをつなぎ、最後は2列目でフリーになった大橋。まるでフリーキックのように、ミドルシュートをゴール右隅へコントロールする。「0−0で前半を終えたかったが、ああいう形で失点してしまった」と愛媛の望月監督。両チームにとって、大きな意味を持つ1点が川崎に刻まれた。



 迎えたハーフタイム。川崎の関塚監督は「愛媛は最終ライン4枚がフラットラインを保ちながら、中盤が上手くやっていた。前半は、中村と大橋の距離感がなかった。パスをつなぎながら相手を崩すことができなかった」と振り返る。さらに、チェイシングをした時の前3枚と中盤の距離・意識も修正し、後半に臨む。これが効果的で、フィフティボールが多かった前半に比べて、明らかにボールの奪取率が高まり、またボールがスムーズに流れ始める。

 そしてスペースでボールを受けられるようになったジュニーニョらが、前半の中で3人がイエローカードを貰っている愛媛の左サイドへドリブルで突っかけて行く。ファールで止めることができなくなった愛媛の守備陣は幾度となく、ペナルティボックス付近まで侵入を許すようになった。

 65分、我慢の臨界点を超えた愛媛の金守智哉が、ペナルティエリア内で突破を図ったジュニーニョを倒してPKを献上。自身は、この日2枚目のイエローカードで退場の憂き目にあう。このPKをジュニーニョが落ち着いてゴール左隅へ流し込んで、とうとう決定的な2点目を手に入れた。

 その後は、川崎が危なげなく試合をコントロールした。ビッグセーブを連発した愛媛GK・川北裕介の奮闘、そして自らの決定力不足によって、追加点こそ奪えなかったものの、2点差を保ったまま試合終了のホイッスルを聞いたのである。



「シーズン最後のノックアウト方式というのは…」とか「解雇が決まっている選手もいる中で戦うと言うのは…」とか。天皇杯については少なくない関係者から、開催時期に関するいろいろなエクスキューズを聞く。難しい面は確かに存在するのだろう。

 だが、この日、川崎と愛媛の両チームと、それをバックアップするサポーターは、そういった聞き飽きた言い訳を脇において、日本サッカー界で最も歴史のあるビッグタイトルへ向けた真摯な戦いを演じた。

 敗れた愛媛の望月監督は「小さな街のクラブでも頑張れば、大きなクラブと良い試合ができるというのを、少しは見せられたのではないかなと思います。全国の小さなクラブチームも頑張ってもらいたいです。そして自分たちがやってきたことが、四国全体のサッカーのために、少しでも貢献できればと思います」。

 勝った関塚監督は「天皇杯はタイトルを狙うラストチャンス。チーム一丸となってそれに向かっている。そして、我々の気持ちと同時にサポーターのタイトルへの期待は非常に高いものがある。我々はその気持ちに応えていけるように、一発勝負の階段を上がっていけるように戦いたいと思います」。

 勝者と敗者のいずれにも大きな拍手を送りたい。


(愛媛FC) (川崎フロンターレ)
GK: 川北裕介 GK: 川島永嗣
DF: 森脇良太、近藤徹志、金守智哉(64分/退場)、星野真悟 DF: 箕輪義信(68分/井川祐輔)、寺田周平、伊藤宏樹
MF: 赤井秀一、宮原裕司、青野大介、江後賢一(62分/大山俊輔) MF: 森勇介、中村憲剛、谷口博之、村上和弘、大橋正博(63分/河村崇大)
FW: 田中俊也(84分/三木良太)、内村圭宏(76分/ジョジマール) FW: チョン・テセ(76分/マギヌン)、ジュニーニョ
<前へ次へindexへ>