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 第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
今年も国立の上空には青空が広がった。
元旦の国立で手に入れた11冠目。鹿島、強さの証明。
第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝 サンフレッチェ広島vs.鹿島アントラーズ

2008年1月1日(火)14:02キックオフ 国立競技場 観衆:22,457人 天候:曇
試合結果/サンフレッチェ広島0−2鹿島アントラーズ(前0−1、後0−1)
得点経過/[鹿島]内田(82分)、ダニーロ(89分)


取材・文/中倉一志

 東京・国立霞ヶ丘競技場の上空に青い空が広がる。サッカーに関わる者なら誰もがあこがれる「元旦の国立」。今年も多くのサッカーファンが日本最大・最古の大会チャンピオンを見届けにやってきた。栄えある舞台に駒を進めてきたのはサンフレッチェ広島と鹿島アントラーズ。4度目の決勝の舞台となる広島は初優勝を、5回目の元旦の国立の舞台を踏む鹿島は6年ぶり3度目の優勝を目指す。

 だが、互いの立場は大きく異なっている。リーグ戦序盤に躓いた鹿島だったが、第25節(9/15)の名古屋戦に敗れたのを最後に勝ち続け、浦和との間にあった勝ち点10の差をラスト5試合でひっくり返してリーグ戦を制覇。その勢いに乗ってチーム史上11冠目のタイトルを取りに来た。粘り強い守備、流れを読む能力の高さ、鋭いカウンター、そして勝負強さ。キャンプから追い求めてきたものが成熟したチームは、いま最も勢いに乗っている。

 対する広島は第24節(9/1)の横浜FC戦に勝利して以降、リーグ戦では勝ち星に見放されて16位に沈んだ。さらに入れ替え戦では京都に敗れて来シーズンからJ2降格が決まった。さらにフロントが退陣し、主力メンバー移籍の噂も取りざたされた。もう一度自信を取り戻し、チームの結束力を確認する戦い。それが天皇杯だった。そして晴れの舞台にたどり着いた。互いの立場は大きく変われども決勝戦を戦う条件は同じ。日本一の称号は譲れない。



 ボールを支配して前へ出る鹿島。リトリートした体制で待ち構える広島。試合は戦前の予想通りの展開で幕を開ける。攻め合いは広島にとっては避けたい展開。そんな思惑が反映した結果だった。しかし、広島の思いを早々と鹿島が打ち砕いた。

 時間は8分。青木剛の足から繰り出されたサイドチェンジが小笠原満男を経由して内田篤人へ。内田はボールをマルキーニョスに預けてトップスピードで縦へ駆け上がる。その走りこんだ先のスペースに戻ってくるボール。そして内田は躊躇することなく右足を振り抜いた。角度は十分とは言えなかった。しかし、誰の目にも捉えられないキャノンシュート。そして、ボールの中心をインパクトする大きな音とともにゴールネットが揺れる。GK下田崇にはノーチャンスだった。

 早々と戦術面の変更を余儀なくされた広島は1点を追って前へ出る。最終ラインを高く保つと、ストヤノフを中心にゆっくりとボールを回しながら鹿島の隙を探る。そして高い位置へ出る駒野友一、あるいはスペースへ動き出す佐藤寿人へロングボールを供給し反撃の機会を窺う。

 だが、鹿島の守備はしたたかだった。「ボールをつなごうと試みてはいたが、縦パス(くさび)がなかなかでなかった」(ペトロヴィッチ監督・広島)。鹿島は広島にボールを持たせても最終ラインの突破は許さない。そして、リトリートして待ち受ける守備と、高い位置からボールを追う守備を使い分けてたくみにゲームをコントロールする。その意思統一は見事。広島につけいる隙を与えないままに前半を折り返した。



 広島にとっては閉塞感の募る展開。しかし、広島も集中力を失わない。それだけタイトル獲得に集中しているのだろう。隙を見せない鹿島相手に、慌てずに丁寧にボールをつないではわずかなチャンスを探る。それを牽引するのは佐藤寿人。労を惜しまずにスペースへ走りこんではボールを引き出していく。それが功を奏したのか、広島にもチャンスが訪れる。61分、高萩洋次郎が決定的なシュートを放つと、63分には森ア浩司の強烈なミドルシュートが鹿島ゴールを襲った。

 しかし、それでも鹿島の牙城は崩れない。引いた守りと高い位置から追い込む守備。押さえどころでは常に先手を取って相手の自由にさせず、勝負どころと見るや、一瞬にしてスイッチを切り替えて鋭いカウンターを仕掛ける。しかも、その切り替えのポイントに一切の乱れがない。いつ、誰が、何をすればいいのかを全員が理解して行動に移す。広島が高い集中力を発揮して攻め続ければ、続けるほど、鹿島の巧みなゲームコントロールが際立っていく。

 やがて試合はロスタイムへ。そして鹿島の強さは自らの強さを証明するプレーで試合を締めくくった。既に3分間のロスタイムが終わりを告げようとしていた時間帯。サポーターの大声援に迎えられてピッチに登場した柳沢敦が本山雅志とのコンビネーションで右サイド深くへボールを持ち出す。そしてドリブルで中へ切り込むと、柳沢らしくゴール中央へのラストパスを選択する。飛び込んできたのはダニーロ。そのひだの足から放たれた唸るようなシュートがゴールネットを突き刺した。



 約3ヵ月半に渡って勝ち続けた末に獲得したリーグタイトルと天皇杯王者の座。その強さの要因をオリヴェイラ監督は話す。「Jリーグを分析すると、攻撃的なチーム、攻撃的な選手が多い。そこで同じように攻撃的にやればやられる確率も高いので、守備の意識をまず高めることを考えた。守備が安定すれば、相手は錯覚を起こして攻撃的にでてくる。我々は常にボールを奪った後の狙いを持って、守備をしながら攻撃の準備をしていた」。それを見事に実践した上での勝利。鹿島は、日本最大・最古の大会チャンピオンにふさわしいチームだった。

 一方、J2降格という現実と向き合う中で、鹿島と堂々とチャンピオンの座を争った広島。リーグ戦で天皇杯と同様の戦いが出来ていればと思うのは私だけではないだろう。それでも難しい状況の中で、ひとつずつ勝ち進んだことはチームと選手にとって貴重な経験になったはずだ。しかし、本当の意味で厳しい現実に直面するのはこれから。多くのチームが経験しているように、J1復帰への道は険しく厳しい。今大会での貴重な経験を生かすも、殺すも、すべては今後の取り組み方次第だ。


(サンフレッチェ広島) (鹿島アントラーズ)
GK: 下田崇 GK: 曽ヶ端準
DF: 槙野智章 ストヤノフ 盛田剛平 DF: 内田篤人 岩政大樹 大岩剛 新井場徹
MF: 駒野友一 森ア和幸 森ア浩司 服部公太 萩洋次郎(83分/高柳一誠) MF: 青木剛 小笠原満男 本山雅志 野沢拓也(80分/ダニーロ)
FW: 佐藤寿人 平繁龍一(77分/李漢宰) FW: マルキーニョス(86分/中後雅喜) 田代有三(89分/柳沢敦)
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