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際立ったハイレベルの意識。G大阪が88代目の王者に輝く。
第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝 ガンバ大阪vs.柏レイソル
2009年1月1日(元旦)14:02キックオフ 国立競技場 観衆:44066人 天候:晴
試合結果/ガンバ大阪1−0柏レイソル(前0−0、後0−0、延前0−0、延後1−0)
得点経過/[G大阪]播戸(116分)
取材・文/中倉一志
その瞬間、国立競技場が大歓声に包まれた。それは単なる天皇杯獲得のためだけのゴールだけではない。年間61試合も戦いながら、なおもまだモチベーションを高め、常に目の前の勝負を勝ち抜くことにこだわり、体がボロボロになりながらも一歩も下がらず、そして、より高いステージを求めて走り続けてきたG大阪の思いが結実したゴール。「もう一度ACLの舞台へ」を合言葉に力の限りを出し尽くして奪ったゴールだった。
決めたのは延長前半からピッチに登場した播戸竜二。
「播戸は昨年の良くない時期と比べれば、フィジカル、メンタルともに上がっていたが、最後のフィニィッシュが決まらない中、本人はストレスを感じていた。彼が飢えているのはゴール。それを上手く引き出すために、途中出場でゴールを狙わせた」(西野朗監督・G大阪)。
「最後は気持ちだった。長いことゴールから遠ざかっていたのでゴールだけを狙っていた。自分が決めることしか考えていなかった」(播戸)。
「ヒーローになって来い」と言われて送り出された男は、その期待に見事に応えた。
「ロッカールームは野戦病院。次の試合に対して非常に心配な状態。相手のことよりは自分たちの整理の方が先になる」。準決勝後の記者会見で西野監督が語ったように、ハードスケジュールを駆け抜けてきた選手たちの体は既に限界。遠藤保仁、橋本英郎らは決勝戦への出場が危ぶまれ、ほかの選手も多かれ、少なかれ、故障を抱えていた。
立ち上がり、そんなG大阪に柏が襲い掛かる。「G大阪が疲れているのは分かっていた。早い時間帯、特に前半のうちに点を取りたいということでスタートダッシュに重きを置いて戦った」(石崎信弘監督・柏)。
高い位置からのチェイシングと、それに連動する激しいプレスでG大阪に襲い掛かる柏は、ボールを奪うと、ミドルレンジのダイアゴナルパスと、スペースに向かって長い距離を走り込むフリーランニングでG大阪に襲い掛かる。6分には、この日最初の決定機を演出。続く8分、11分にもゴールチャンスを作り出した。両チームの間のスピードと運動量の違いは明らか。G大阪にとっては苦しい立ち上がりだ。
しかし、この猛攻を凌いだ後の15分、明神智和のミドルシュートが柏ゴールを襲う。そして、これが合図になったかのように、ここからG大阪がリズムを刻みだす。やや選手間の距離が広い柏のスペースを利用してボールをまわし、楔を打ち込んでチャンスを窺う。柏が隙を見せなければ、ボールを戻して何度も、何度も、丁寧に攻撃を組み立てる。その緩急の変化をつけたパスワークの前に、柏はジワジワと追い込まれていく。しかし、疲労の蓄積したG大阪にラストサードを突破する力が足りないのは否めず。得点を奪うにはいたらなかった。
最初に動いたのは石崎監督。後半開始から太田圭輔に代えて切り札・フランサを送り出す。そのファーストプレーでスタジアムが大歓声に包まれた。その独特の間は、まさに異次元。ひとたびボールに触ると、まるで魔法でも掛けたかのようにピッチの上のリズムが変わる。どちらかと言えば縦に忙しかった柏に緩急の変化が生まれ、ミドルレンジのパスからショートパス中心の攻撃に変わり、それが柏の持ち味である縦への速さをさらに強調する。そして58分にはポポに代えて李忠成を投入。柏はここぞとばかりに勝負に出た。
しかし、G大阪は崩れない。ギリギリのところで踏ん張って荒波をやり過ごすと、柏が一息ついたところを待っていたかのように攻撃に転ずる。ボールキープ率を上げ、ボールをまわし、バイタルエリアを丁寧について柏ゴール前に迫る。ここからゲームはハイレベルな膠着状態に。ボールを回して隙を探るG大阪。中央の守備を厚くしてカウンター一発を狙う柏。一瞬たりとも集中を切らすことが出来ないハイレベルな膠着状態が続く。
そんなゲームに変化が見え始めたのは延長戦に入ってから。柏の運動量が落ち、そしてたボロボロのはずのG大阪の運動量が柏を上回り始める。時間の経過とともにG大阪がボールキープ率を上げていく。しかし、G大阪に一気呵成に畳み掛ける力は残されていない。狙うのはワンチャンスに全ての力を注いでゴールを奪うこと。そのタイミングを見計らうかのように、丁寧に、丁寧にボールを回していく。勝敗が決するのは一瞬。G大阪はその時を待つ。
そして116分、ついにG大阪が待ち続けていた瞬間が訪れる。ルーカス、遠藤、倉田秋とつないで中央を突破してラストパスが播戸へ、播戸が左足で放ったシュートは相手DFの体を張ってブロックしたが、そのボールが播戸の目の前にこぼれた。迷わずに左足を振る播戸。次の瞬間、ボールはゴールへ吸い込まれた。大歓声に包まれるスタジアム。喜びを爆発させるイレブン。長い旅路の末に、G大阪はとうとう頂点にたどり着いた。
柏に勝機はあった。立ち上がりに一気呵成に勝負を仕掛けた時間帯と、異次元の力を持つフランサを投入し、さらに李忠成を入れて勝負を仕掛けた時間帯だ。「立ち上がりで点を取れなかったことが痛かった。それでもフランサ、李忠成を投入して何とか点を取りにいったが、そこでも点が取れずに延長戦になってしまったのが残念だった」と石崎監督も振り返る。選手起用、ゲームの流れの作り方ともに予定通りに進めた試合。ただ思うようにならなかったのはゴールの部分だった。
だが、それ以上に際立ったのはG大阪の勝利に対する強い意識だった。
「素晴らしい選手、スタッフに、ただ感激している。結果にこだわらなければいけないプレッシャーがあったし、次のシーズンのACLにチャンピオンチームとして出場しなければというプレッシャーもあった。正直、全てを出し尽くしたCWCが終わってからの状態と今日の結果は結びつくものではなかった。しかし、自分たちに見えない心のうちに潜んでいる力を、自分たちで引き出して戦ってきた10日間での3試合だった。内容は満足のいくものではなかったが、結果には満足している。ただ、ただ選手たちを讃えたい」
そう語る西野監督の目には、うっすらと涙がにじんでいるように見えた。
彼らが天皇杯を力の限りに戦ったそもそものモチベーションは、チャンピオンとして、再び2009年シーズンにACLに出場したいという思いだった。しかし、彼らは戦いを続ける中で、その気持ちをさらに高いレベルまで引き上げ、その全てをCWCで一度出し尽くした後、更なる高いレベルの意識を手に入れて天皇杯を戦い抜いて88代目のチャンピオンの座に輝いた。過去幾多の好勝負と、タイトルにふさわしいチャンピオンを生んできた天皇杯。いずれのチャンピオンも等しく素晴らしい。だが、その中でも、G大阪の戦いぶりが際立っていたことは間違いない。
| (ガンバ大阪) | (柏レイソル) | |||||||
| GK: | 藤ヶ谷陽介 | GK: | 菅野孝憲 | |||||
| DF: | 加地亮 中澤聡太 山口智 安田理大 | DF: | 村上佑介 古賀正紘 小林祐三 大谷秀和 | |||||
| MF: | 橋本英郎(113分/倉田秋) 明神智和 遠藤保仁(119分/武井択也) 寺田紳一 | MF: | 太田圭輔(HT/フランサ) 栗澤僚一 山根巌(66分/石川直樹) アレックス | |||||
| FW: | ルーカス 山崎雅人(90分/播戸竜二) | FW: | 菅沼実 ポポ(58分/李忠成) | |||||
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