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 第86回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
試合は藤枝東のキックオフで始まった。
王国完全復活まで後ひとつ。藤枝東、34年ぶりの決勝へ!
第86回全国高校サッカー選手権大会 準決勝 高川学園高校vs.藤枝東高校

2008年1月5日(土)14:15キックオフ 国立競技場 観衆:2,1317人 天候:晴
試合結果/高川学園高校0−1藤枝東高校(前0−1、後0−0)
得点経過/[藤枝東]河井(11分)


取材・文/中倉一志

 高校選手権ファンにとって忘れることが出来ないのが藤色のユニフォームだ。インターハイ、国体、選手権の3冠達成を含め、60年代後半から70年代前半で8つの全国タイトル(通算では10回)を獲得した藤枝東は、その洗練されたパスサッカーで高校王者の名を欲しいままにし、多くの一流選手を排出した。その藤色のユニフォームが10年ぶりに全国の舞台で復活。そして、服部康雄監督が自ら選手として決勝戦に新出して以来の34年ぶりの決勝戦を目指して国立に登場する。

 高川学園もまた、サッカーファンにとってはお馴染みの存在だ。前身の多々良学園から通算して15年連続20回目の全国の舞台。しかし、その道のりは平坦ではなかった。2年前に明るみに出た経営破たん。その後、高川学園として再スタートを切ったが、ここまで来るには口には出来ない多くの苦労を経験したはずだ。その中で手に入れた2度目の全国ベスト4(前回は多々良学園)。多々良学園時代には手が届かなかった頂点の座を目指して準決勝に臨む。



ゴール前での激しい攻防。
「ここまで何試合かありましたけれど、最初から最後まで満足いくような内容はなくて結果だけでした」(服部監督・藤枝東)。とはいえ、U-18日本代表の河井陽介を中心に、3−5−2の布陣から繰り出すパスサッカーは全国ベスト4にふさわしい。三鷹との準々決勝では思うようなサッカーが出来なかったが、この日は、ショートパスとミドルレンジのパスを織り交ぜてピッチを広く使うサッカーを立ち上がりから発揮。着実に自分たちのリズムを刻んでいく。

 一方の高川学園の布陣は4−3−3。「前半20分はある程度引き気味に戦っていこうと。ボールに高い位置からプレスをかけて何とか対応しようと。そして、ワンチャンスを狙っていた」(白井三津雄・高川学園)。粘り強い守備から原田光のドリブルで起点を作り、益田拓己、齋藤達也、吉武隼人の3人がゴールを目指す。守備的とは言え、チャンスには3トップに加えて、両WBとボランチが参加して6人が駆け上がるサッカーは、油断ならないチームであることが窺える。

 そんな両チームの対戦で主導権を握ったのは藤枝東。「今日の前半のサッカーは楽しかったですし、いいサッカーが出来た」という服部監督(藤枝東)の言葉が表すように、思い通りのサッカーを展開。バイタルエリアで起点を作り、両サイドからの突破、そして2列目からの飛び出しでチャンスを築いていく。そしてゲームを作るのは河井。彼の両足から繰り出される緩急自在なパスがチャンスを作り出していく。



 その藤枝東の先制点は11分。ゴール前左で河井がヒールで落としたボールを石上幸征がゴール前中央へ。そのボールを受けた松田純也が中央でタメを作ると、そこへ走りこんできたの河井が右足を一閃。ゴールへ続く狭いシュートコースを一直線に進んだボールがゴールネットに突き刺さった。エースが決めればチームに勢いがつく。藤枝東は、その後も決定機の山を築いていく。高川のGK胴ヶ瀬勇馬の好セーブの前に追加点を奪うことが出来なかったが、「藤枝東、強し」の印象を強く残した前半だった。

 そして高川学園の反撃は後半に入ってから。益田拓己を中盤に下げて4−4−2の布陣に変更して中盤を落ち着けると、ミスが目立ち始めた藤枝東に乗じて前への意識を強くする。前半は自分たちのいいところを全く消されていたが、少しずつ自分たちのサッカーを取り戻していく。しかし、藤枝東も最後の壁は崩さない。「守備が安定してきたのが勝てるようになった要因」(服部監督)というように、この日も3人の守備ラインを中心にしたチームの守備に対する意識は衰えず。リズムが変わっても、高川学園に決定的なチャンスは与えない。

 その姿勢は最後まで崩れなかった。ボールを拾って、つないで、そして前へ送り込んでゴールを目指すに高川学園に対してカウンターで対抗。セットプレーからゴールを狙って高川学園を押し戻す。試合はどちらのリズムとも言えない展開だったが、それでも高川学園にリズムを渡すことだけはしなかった。「崩されているという感じじゃなかったですし、1対1の対応もしっかり出来ていましたし、相手に大きな選手もいませんでしたから、何とか逃げ切れるんじゃないかなと思っていました」(服部監督)。その言葉どおり、ロスタイムの2分間も危なげなく過ごして34年ぶりの決勝進出を果たした。



1点ビハインドを追って円陣を組む高川学園。しかし、ゴールは遠かった。
 満足のいく試合が少なかったと言いながらも、34年ぶりに決勝戦の舞台にたどり着いた藤枝東。その決勝戦では優勝候補筆頭に挙げられている流通経大柏と合間見える。

「(流通経大柏は)個々の技術はしっかりしていますし、鍛えられているなという感じはあります。けれど、高校生は1年間を通してずっとトップコンディションを維持するのは難しいので、その辺でつけいる隙もあるんじゃないかと思います。ただ、姑息な方法はやりたくなく、とにかく3年間やってきたことをすべて出したい。みんなが喜ぶような、攻撃的なサッカーをしたいと思います」(服部監督)。藤枝東は普段着のままで決勝戦に臨む。

 一方、「ゴールが遠いと感じました」とは白井監督。多々良学園時代から通算して2度目、高川学園としては始めての舞台となった国立の印象を語った。そして続けた。「すっきりとしたこの青空のもとで、関係の皆様が仕事をされている動きが非常に見えて、こういう風に多くの方々の運営の中で大会が86回も受け継がれてきたんだなと、その感謝の気持ちを感じました。以前はそういうところが見えなかったですね。チームを何とかとなければいけない、学校を何とかしなければいけないということばかりでしたから、敗れはしましたけれど本当に国立を、楽しませていただきました」。

 それは様々なことを乗り越えてきたからこその言葉だろう。「仏には見放されましたけれども神が来たと思っていますので、これを原点にしてひとつ、ひとつ積み重ねて生きたいなと思っています」と、苦しかった時期をジョークで笑い飛ばした白井監督。今度はサッカーの神様を味方につけて、更なる高みに向けての挑戦を開始する。


(高川学園) (藤枝東)
GK: 胴ヶ瀬勇馬 GK: 木村誠志
DF: 元村渉太 藤永佳裕 小川純 有薗隼人 DF: 村松大輔 小関教平 鳥羽亮佑
MF: 村上創一(68分/籾山健) 長野史也 原田光(50分/金城基樹) MF: 藤田息吹 小林勇輝 平井大輔(66分/中村龍一郎) 石上幸征 河井陽介
FW: 益田拓己 齋藤達也 吉武隼人(60分/西本大輝) FW: 松田純也 岡ア太一(74分/稲葉英昭)
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