| |top|news|column|history|special|f-cafe|about 2002w|BBS|mail to|link| |
| 第86回全国高校サッカー選手権大会 | <前へ|indexへ> |
流通経大柏、強さの証明。
鍛えられた強さ。流通経大柏は優勝候補のプレッシャーをはねのけて見事初優勝を飾った。
第86回全国高校サッカー選手権大会 決勝 藤枝東高校vs.流通経大柏高校
2008年1月14日(月)14:05キックオフ 国立競技場 観衆:48,884人 天候:曇
試合結果/藤枝東高校0−4流通経大柏高校(前0−1、後0−3)
得点経過/[流通経大柏]村瀬(6分)、大前(48分、62分)、田口(71分)
取材・文/中倉一志
2年前、「セクシーフットボール」のキャッチフレーズのもと、国立にセンセーショナルを巻き起こした山本監督(野洲)は、初優勝後の記者会見で「一番大事にしていることは何か」と問われて、こだわりを持つことと答え、その例として国見高校を挙げた。誰もが野洲とは対極を行くサッカーと見ていた国見。求める方向性は違う。しかし、自分たちのやり方にこだわり、高校生活の最後の大会を自分たちが積み重ねてきたものの全てをぶつける姿勢に変わりはない。そして今年もこだわりを持つ2つのチームが決勝戦で相見える。
まずは藤枝東。サッカーどころ静岡らしく、ボールをつないで相手を崩すことにこだわる。「姑息な方法はやりたくない。とにかく3年間やってきたことをすべて出したい。決勝用のシステムをやってみたり、ずっと守ってみて最後に1点を取ってとか、そういったことは死んでもやりたくない」(服部康雄監督)。結果にこだわっていないのではない。それが藤枝東が勝利するためのアプローチの仕方だ。どこまでボールを回せるか。すべてはそこにかかっている。
そして流通経大柏。「とにかく勝ちにこだわること」。本田裕一郎監督は事あるごとに口にする。高校サッカーの最激戦区・千葉県代表。しかも、他校がうらやむほどの環境が用意されている。勝利することは、そうした中でサッカーに取り組む者の責任とも言えるかもしれない。しかし、内容にこだわっていないのではない。むしろ、選手に求める技術レベルと、組織戦術への理解度はどこよりも高い。それなくして勝ちにこだわることはできない。
48,884人の大観衆の前に姿を現した藤枝東の布陣は、いつもの通りの3−5−2。インターハイ、高円宮杯、高校選手権のすべてで得点王を狙う大前元紀(流通経大柏)にも特別なマークはつけない。あくまでも攻め勝つ。その気持ちが伝わってくる。そして流通経大柏は4−3−1−2。中盤では海老原慎吾が河井陽介(藤枝東)に対してマンマークで付き、名雪遼平と中里崇宏が前に出てくる相手を捕まえる。決勝戦用の戦い方。これも流通経大柏のこだわりだ。
たどり着いた決勝の舞台。互いの健闘を誓い合う両キャプテン。
試合開始直後に小林勇輝が縦への突破を仕掛ける藤枝東。それに対抗するかのように上條宏晃がヘディングシュートを狙う流通経大柏。両チームとも立ち上がりからフルパワーでぶつかる。そして6分、ゲームは早々と動いた。右サイドを駆け上がった名雪から中央で待つ大前へ。ペナルティエリア内でドリブルを仕掛けた大前は相手DF3人を引きつけてからバックパス。そこへフリーで村瀬雄太が走り込む。唸る村瀬の右足。ゴールネットが大きく揺れた。
ここからは流通経大柏の一方的なペース。パスをつなごうとする藤枝東にハイプレッシャーで襲いかかってボールを奪うと、シンプルに裏へ展開。前線では怪我から復帰した上條宏晃が圧倒的な存在感を見せて起点を作り、そこへ後方からグイグイと押し上げる。藤枝東は自陣内に押し込まれたまま。ハーフウェイラインを超えることさえ叶わない。ペース配分など気にしていないかのようにフルパワーで前に出る流通経大柏の迫力は目をみはるばかりだ。放ったシュートは11本。藤枝東を文字通り圧倒した。
それでも、藤枝東も30分を過ぎた辺りから落ち着きを取り戻す。本来の出来には遠いが、それでもボールが回るようになっていく。「だいぶ慣れてきたものですから、1点のビハインドのゲームは過去にもありましたし、ボランチを使ってビルドアップをしていこうと指示をしていました。向こうもハイペースで来たので何とかなるんじゃないかと思っていました」。0−1で折り返したハーフタイム。この時点では、服部監督(藤枝東)の感触も決して的外れなものではなかった。
そして、後半に入って藤枝東が仕掛ける。47分、右サイドで起点を作った藤田息吹のアーリークロスに岡崎太一が飛び込む。足に当てさえすればゴールが捉えられるシーン。わずかに届かずゴールは逃したが、藤枝東の反撃を期待させるには十分なプレーだった。しかし、この1分後、流通経大柏は自らの強さを証明するスーパープレーで追加点を奪う。そして、それがゲームの約絵を決定づけた。
「これで終わったわけじゃない」。服部監督の言葉を胸に焼きつけて、藤枝東イレブンは新たな挑戦を始める。
左サイドの攻防でボールを奪った流通経大柏は素早く切り替えて前へ。村瀬からペナルティエリア内で待つ上條へとボールが渡る。DFを背負う上條は、しっかりとボールをキープして仲間の上がりを待ってからヒールパス。そして大前の右足が唸る。これはGK木村誠志がスーパーセーブではじき返したが、ゴールラインを切るかに思われたボールをギリギリのところから名雪がゴールラインと平行に折り返す。そしてファーサイドで待っていたのは大前。左足ボレーで捉えたボールが目にもとまらぬスピードでニアサイドに突き刺さった。
この追加点で、千葉県代表として、優勝候補の筆頭として、多くのプレッシャーの中で戦っていた流通経大柏の選手たちが全ての制約から解放された。もはやその勢いは誰にも止められない。1対1の個の勝負で勝ち、組織で圧倒する。個人の力と組織プレーがハイレベルで融合したサッカー。そこから繰り出されるプレーに観客は目が離せない。62分のゴールを引き出したのは比嘉祐介の素晴らしいドリブル突破。最後はゴール前でつぶれた上條が大前の2ゴール目を助けた。
流通経大柏が71分に挙げた4点目はセットプレーから。大前が蹴ったCKを頭でそらしたのは村瀬。最後はファーサイドに現われた田口泰士がスライディングボレーで合わせた。田口にとって交代出場直後のファーストプレーだった。そして最後はいつものようにゲームをコントロール。奪ったボールをしっかりと高い位置へ運んでボールをキープ。わずかな隙さえも見せずに、初優勝を告げるホイッスルの音を聞いた。
「相手よりもうちの子たちの動きしか見ていませんでしたけれど、ここ数試合では一番よかったように思いました」(本田監督・流通経大柏)。苦しんだ2回戦の久御山との戦いから、1戦毎に身にまとわりつくプレッシャーをひとつずつ剥がしていった流通経大柏は最後の試合でベストパフォーマンスを発揮。終わってみれば、強敵・藤枝東さえも寄せ付けずに頂点にたどり着いた。そんな試合も、前半は、度々ベンチを飛び出して指示を送った本田監督。その姿には絶対に勝ちたい。教え子と一緒に日本一になりたい。そんな気持ちが溢れていた。
宙に舞う本田監督(流通経大柏)。選手とともに味わう初優勝の味は格別だ。
勝つために技術を戦術で補ったのではない。どこにも負けない高い技術を持ち、それでもなお負けないために高い戦術眼を植え付け、大舞台で力を発揮できる強い精神力を鍛えた。国立にたどり着くまでは決して万全の戦い方を続けたわけではない。それでも、負けることが想像できないしぶとさ、強さを常に身にまとっていた。徹底的に鍛え上げられたチーム。それが大会を通じて流通経大柏が示した姿だった。
さて、つなぐサッカーにこだわり、それゆえに流通経大柏のプレッシャーにさらされた藤枝東。しかし、その戦い方に間違いはない。強敵相手に逃げれば相手の思う壺。相手を潰すには相手の強みに、自分たちの強みで上回るしかない。今回はそれが叶わなかったが、この悔しさは自分たちのサッカーをさらに磨くことでリベンジするしかない。
「上には上がいるということ。でも、これで終わりじゃないので、3年生は大学で今日の悔しさを胸に頑張ってもらいたし、1、2年生はまたここに戻ってこれるように、1本のキック、1本のパス、ヘディングにしても、こだわってやっていきたいなと思います」(服部監督)。全国の舞台で見事に復活を果たした藤色のユニフォームは、頂点の座を奪回すべく新たなチャレンジを始める。
●本田裕一郎監督(流通経大柏)記者会見 ●服部康雄監督(藤枝東)記者会見
| (藤枝東) | (流通経済大学柏) | |||||||
| GK: | 木村誠志 | GK: | 須藤亮太 | |||||
| DF: | 村松大輔 小関教平 鳥羽亮佑 | DF: | 中富翔太(86分/野村隼人) 天野健太 秋山心 比嘉祐介 | |||||
| MF: | 藤田息吹 小林勇輝 石上幸征 平井大輔(52分/中村龍一郎) 河井陽介 | MF: | 名雪遼平 中里崇宏 海老原慎吾(70分/保戸田晴彦) 村瀬勇太 | |||||
| FW: | 岡ア太一(66分/稲葉英昭) 松田純也 | FW: | 大前元紀 上條宏晃(69分/田口泰士) | |||||
| <前へ|indexへ> |