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 第28回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
山郷は抜群の存在感で無失点に抑えた。
そびえ立つ「個」の力。
第28回全日本女子サッカー選手権大会準々決勝 大原学園JaSRA女子SCvs.浦和レッズレディース

2006年12月24日(日)13:45キックオフ Jヴィレッジスタジアム 観衆:261人 天候:曇
試合結果/大原学園JaSRA女子SC0−4浦和レッドダイヤモンズレディース(前0−1、後0−3)
得点経過/[浦和]木原(23分)、安藤(56分、80分)、窪田(77分)


取材・文/西森彰

 準々決勝の第2試合に姿を現したのは、なでしこリーグディビジョン1とディビジョン2でそれぞれ2位になった、浦和レッドダイヤモンズレディースと大原学園JaSRA女子SCだ。

 山郷のぞみ、柳田美幸、安藤梢とドーハ帰りのなでしこジャパン3人を擁し、今大会も優勝候補の一角である浦和。来年からディビジョン1に復帰する大原学園にしてみれば、力試しができる格好の相手でもある。経験豊富なオーバーエージは、両サイドの土橋優貴、井上稚子とエースの津波古友美子だけ。それ以外はベンチの5人も含めて、全員がU-23世代の大原学園は、その若さをキックオフから叩きつけた。



「先制点をどちらが手に入れるかというのが、大きな鍵を握ると思っていました。ウチの選手たちは技術的に高い選手が多いわけでもない。『それなら最初から自分たちらしさを出して、どこまで戦えるかを試そう』と選手たちには話をしてきました」(種田佳織監督・大原学園)

 最前線の楯石佳子、中川千尋の2名を先頭に、大原学園は出足良く挑みかかった。そして、ゴールが見えると多少遠目からでもシュート。自分たちのリズムでサッカーを運んでいく。 ペース配分を忘れたかのように全力で挑みかかる大原学園に、浦和の選手たちは戸惑いを見せていた。

「非常に相手の詰めが速くて、なかなか良い展開ができませんでした。向こうは攻撃のところでも、簡単に、簡単にプレーをしていますよね。ああいうところはウチでも(同じように)つなげるんじゃないかって。(浦和は)足元、足元で終始しちゃっている感じでした」(永井良和監督・浦和)

 そして21分、大原学園は絶好の先制機を迎える。左サイドからダイレクトタッチでボールをつなぎ、右サイドで完全に余った中川が、強烈なシュートを見舞った。しかし、ここで代表GKの山郷が大原学園の前に立ちふさがった。最後の瞬間まで自分からは動かずに、中川とボールを見ながらきっちりとコースを限定する。そして、強烈なシュートを無理にキャッチしようとせず、フィスティングで確実に枠の外へと弾き出した。「このビッグチャンスを消しさえすれば良い。コーナーキックを与えても問題はない」。そんなつぶやきさえ聞こえてきそうな、余裕を持った捌き方。

「やっぱり、向こうの山郷選手は手堅いですね。何とか相手のディフェンスを崩して、ゴールに迫れても、最後に山郷選手の『個』の力で防がれた場面がたくさんあったと思います」。大原学園の種田監督は、浦和の守護神を讃えるしかなかった。このビッグセーブが大原学園ペースで進む試合の流れを変えた。



浦和・安藤梢は決定的な追加点を奪う。
 それまで無得点に抑え込まれていた浦和は23分、高橋彩子のコーナーキックで生まれた混戦から、ゴール正面でこぼれ球を待っていた木原梢がシュート。これが、敵味方の選手が作る林を抜けて、弾丸のように大原学園のゴールへ突き刺さる。このゴールが、味方を相当楽にし、大原学園を難しい状況に追い込んだ。

「前半を凌いだんで、後半は大丈夫だと思っていました。向こうもディビジョン1に上がってきたチームということで勢いもあるし、元気な気持ちがあるうちは、ウチもボールをとられていました。その分、後半は疲れていた感じでしたよね。寄せなんかも甘くなってきましたし、ウチは楽にできたと思います」

 あれだけ飛ばして90分間持つチームなど、どのカテゴリーであろうと、なかなかない。自分たちがペースを握っていた前半にゴールを奪えなかった時点で、大原学園の勝機は遠のいていた。それでも大原学園の選手たちは絶望的な状況下で、抵抗を見せる。その奮闘に止めを刺したのは、これまたドーハ帰りのエースだった。

 56分、窪田飛鳥からのパスを受けた安藤が、相手のDFを背負いながらもボールタッチしながらシュートコースを作り出すと素早く右足を振りぬく。「コースが甘かった」と本人は謙遜したが、球足の速いシュートが大原学園のゴールネットを揺らす。「1点取られた時点で、既に焦りもありましたけれども『まだまだいけるんじゃないか』って。2点目がベンチにとっても、選手にとっても大きかったですね」(種田監督)。

 点差を開かれた大原学園は前線にフレッシュな選手、シュートを打つ余力の残っている選手を集めた。これに対して、浦和は途中出場で入った法師人美佳が、右サイドをドリブルで仕掛けるなど、疲れきった選手で構成される大原学園の最終ライン近くでプレーを続ける。そして77分に窪田、80分に安藤が再びゴール。最終的には4対0で快勝した。



来年からは同じ舞台で戦う2チーム。
 敗れた大原学園だが、目を見張るような真摯な戦い方が光った。目新しいテクニックは見られなくとも、シンプルにプレーすることでディビジョン1の強豪を慌てさせたのだから「いつも言っていることを選手たちが見せてくれた」と種田監督も全般としては満足している。ただし、来シーズンからは、今日の対戦相手とのゲームが日常となる。

「今日が今シーズン最後になったので『今度からはあのチームと対等に戦わなければいけない』と選手たちに伝えました。終わりじゃなくてスタート。もっともっと変えていかなければ、毎試合下を向くような結果になってしまう。それじゃあ今年せっかくディビジョン1昇格を勝ち取った意味がありませんから」(種田監督)

 そして勝った浦和は、今年もベスト4へ歩を進めた。時間帯によっては、受身になる場面もあったが「完成されたチーム。試合を通して見るとやっぱりリーグの上位になるチームですね。手堅い」と敵将に感じ入らせる、貫禄勝ちだった。4得点は、相手が前がかりになってきた結果でもあるが、そこできっちりとゴールを奪えるのは、力がついてきた証拠だ。

 この日の充実振りを見ていると、元旦の男女アベック優勝も夢ではないように思えたのだが…。



(大原学園JaSRA女子SC) (浦和レッドダイヤモンズレディース)
GK: 鈴木理沙 GK: 山郷のぞみ
DF: 土橋優貴、中尾美鈴、高木奈央、井上稚子 DF: 木原梢、田代久美子、笠嶋由恵(61分/森本麻衣子)、岩倉三恵(80分/百武江梨)
MF: 中野真奈美 、山本裕美、住江真祐子(70分/渡邊真結子)、津波古友美子 MF: 保坂のどか(56分/法師人美佳)高橋彩子、柳田美幸、安藤梢
FW: 中川千尋(52分/竹内真菜美)、楯石佳子(78分/長島しおり) FW: 北本綾子、窪田飛鳥
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