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| 第28回全日本女子サッカー選手権大会 | <前へ|次へ|indexへ> |
岡山湯郷、日テレの3連覇を阻止し、初の決勝進出。
開始3分。宮間のFKからいきなりゴールが生まれた
第28回全日本女子サッカー選手権大会準決勝 日テレ・ベレーザvs.岡山湯郷Belle
2006年12月29日(木)12:51キックオフ 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 観衆:600人 天候:晴のち曇
試合結果/日テレ・ベレーザ0−1岡山湯郷Belle(前0−1、後0−0)
得点経過/[岡山湯郷]加戸(3分)
取材・文/西森彰
「川上(直子)が今大会で最後なので『決勝で会いたい』という気持ちがすごく強かった。チーム全員で試合前に集まって『元のチームメートとして最後に決勝で一緒に試合をできるように、みんなで頑張ろう』と話し合っていたんですけれども」(磯崎浩美・TASAKIペルーレFC)
第1試合で浦和レッドダイヤモンズレディースを破ったTASAKIの選手たちは「これでようやく国立で川上と戦える」と思っただろうし、選手や監督を囲んだ報道陣の多くも、日テレ・ベレーザと戦うことを前提とした質問が相次いでいた。PK戦の殊勲者となった阪口夢穂が言った「まだ、相手が決まったわけじゃありませんよ」というセリフは、笑いとともに聞き流されていた。
スタジアムにいる、ほとんどの人間の頭から、日テレの対戦相手である岡山湯郷Belleにも「元旦、国立霞ヶ丘陸上競技場」の夢を見る資格があることが、すっぱりと抜け落ちていた。
いや、岡山湯郷の人間でも、その資格を忘れかけていた。本田美登里監督は「(試合前の勝算は)0.5パーセントか1パーセントでした。正月もどこかに旅に出ようと思っていた」と告白する。だが、選手たちの気持ちは、会場入りしてから変化が生じていた。「(勝てるとは)全く考えていなかった」(宮間あや)が、「前の試合を見ているうちに私も含めてみんなの気分が盛り上がってきた。そして、その気持ちを前面に出せた」のだという。
荒川(左)の突破を2人がかりで止めにかかる岡山湯郷Bell
逆に日テレ・ベレーザにしてみれば「元日の相手はTASAKIになったか」くらいのものだったろう。今年のリーグ戦で3連勝、しかも270分間を無失点に抑えている相手に、緊張感を保つのは容易なことではなかった。
「今シーズンの結果だけを見れば、マリーゼまではディビジョン2のチーム。ここからがディビジョン1だし、リーグでベスト4に入っているチームだから力は当然あるし、向かっていくつもりでないといけないとは伝えたつもりです。それでもどこかに『負けるわけがない』という甘さが残っていたかも知れません」(松田岳夫監督・日テレ)
劇的な結末を迎えたTASAKIペルーレFCと浦和レッドダイヤモンズレディースの第1試合。PK戦までもつれたために試合の間隔は詰められ、ただでさえ気持ちの高め方が難しい状況だった。そこに岡山湯郷の選手たちは熱を帯びた状態で試合に入っていった。
そして、日テレが眠っている間に一撃を見舞う。3分、長い距離のあるFKで、キッカーとなった宮間はGKとDFの間にボールを落とす。「良く加戸が触ってくれました。ただ、城地と田中も飛び込んでいたんで、誰が触ってくれても入っていたと思います」とは蹴った宮間の弁。あのセットプレーに関しては誰かにあわせるのではなく、宮間が蹴りこむゾーンを自分で決めて、受け手がそのボールにあわせるやり方だった。
そして敵味方の選手がもつれるところ、ボールに触ったのは高校1年生の加戸由佳。昨シーズンも日テレからゴールを奪っている、早熟なストライカーが岡山湯郷に先制点をもたらした。「0.5パーセントか1パーセントだった勝算が、点が入って3パーセントくらいになった」と本田監督。同時にピッチ上の選手たちからも、これまでのような日テレに対する恐れは消え去っていた。
先制された日テレだが、全く慌てる様子もなく、ゆっくりとボールをつなぐ。「岡山湯郷はディフェンスラインが高いというところに特徴があるチーム。これまではまずそこを狙っていったんですけれども、裏のスペースを意識しすぎて嵌ることが多かった。だから、今日はしっかりとつないでいこうと。もちろん裏は狙うんだけれども、まず相手を前に出させてそれから裏を狙おうと選手たちに指示しました」(松田岳夫監督・日テレ)。日テレの選手たちはポゼッションをキープしながら、岡山湯郷守備網の穴を探る。
終了間際にスーパーセーブを連発してゴールを死守した福元美穂(右)
「つまらないサッカー」(本田監督)で岡山湯郷は対抗する。日テレの選手たちの足元へ飛び込まないように気をつけた。「本来、シュートを打たせるところまで行っちゃいけないんですけれども、コースを狭めて後はGKに任せました。前線の選手もパスコースを限定してくれた」(藤井奈々)。ボールを足元にさらしながら、フィッシングのタイミングをうかがっても迂闊に飛び込むことなく、前方へのパスコースを限定しながらディレイに徹する。
そして近賀ゆかりや大野忍らが、得意のドリブルで抜き去りにくると、2枚、3枚と後ろの選手がカバーリングに入る。そしてボールを奪っても、中途半端につなごうとしない。相手選手にコースを切られて追い込まれると、足元の技術に長けているGKの福元美穂へボールを返して難を逃れる。両サイドの前方に大きく蹴り出し、田中と加戸の両FWがこれを追いかけて時間を使う。
今シーズン、既に3回対戦しているから、どちらも相手のやり口は分かっている。スペースを与えないようにコンパクトなブロックを作って守る岡山湯郷。その陣形を崩すために引き出そうと仕掛ける日テレ。両チームのシュート数合計6本、一見すると凡戦にも見える45分間だったが、ピッチの中ではさまざまな駆け引きが行なわれていた。
「想像以上にボールへの密集度が高かったので、パスコースがなかなか見つからず、リズムを崩してしまった」前半を受けて、松田監督は迷った。「荒川恵里子のところをすごく迷いました。最後まで使おうか、それとも個で打開できないところをグループで打開しようか、と」。悩んだ末に、大野とのコンビネーションが良い永里優季の投入を選び、個の打開力ではチーム随一の荒川はベンチへと下がった。
そして、風邪で前の2試合を欠場していた川上直子を右サイドに投入する。ここも誰を下げるか、いくつかの選択肢があった。「はっきりいって、両サイドともに良くなかった。宇津木(瑠美)を下げて、中地(舞)を左に回すことも考えましたし、須藤(安紀子)か、四方(菜穂)をセンターに入れて、豊田(奈夕葉)をサイドに回す手もありました」。ピッチにはドリブルで仕掛ける中地ではなく、ゲームを組み立てる宇津木が残された。
ハーフタイムに行なった日テレの選手交代に、本田監督はホッとしたという。「個でゴリゴリ来られていたら、90分間は持たない。最後は相手の仕掛けに股抜きだなんだで、やられていたはず。荒川を下げてくれたのはありがたかった」。
63分、岡山湯郷・田端沙由理のミドルシュートがバーに阻まれれば、74分、裏のスペースでボールを受けた日テレ・大野のループシュートも枠を捉えることができない。「いつ同点になるか」というスタジアムの雰囲気が、徐々に「このまま行っちゃうんじゃ」に変わる。岡山湯郷のファンの歌声は、高まっていく緊張からか、時として上ずりはじめ、スタンドの上段に陣取っていた日テレのファンは、残り10分を切ったあたりから、ピッチに近い最前列に集まって声援を送る。それまでベンチでじっと戦況を見守っていた本田監督も、テクニカルエリアに出て指示を出し始めた。
日テレは川上にボールを集中。右からのクロスで84分には近賀が、88分には澤穂希がヘディングシュートを放ったが、どちらも福元に阻まれる。4分間のロスタイムに突入してからも、川上のパスから、91分に近賀、93分に伊藤香菜子がゴール前でシュートを放つ。だが、力が入ってしまったか、どちらも枠を外れてしまった。
日テレがこの日に放った10本のシュート、その最後の1本は川上の現役生活最後のシュートでもあった。低くスピードの乗ったシュートは、しかし、なでしこジャパンの正GKの懐に収められた。キャッチした福元が右前方に大きくボールを蹴る。その瞬間、試合終了を告げる井脇真理子主審の笛が鳴った。
川上は出身地・神戸でサッカー人生を終えた。
日テレは最後まで形を作ることに拘った。本田監督は「普段どおりにやられたほうが嫌だった。ドリブルで行ってワン・ツーではたかれて、食いつきに行ってクロスを入れられて、逆サイドにやられたら…」と語り、「負けているチームは普通、焦って個々がそんな仕掛けを始めるものだけれど、日テレは最後まできれいに崩してきた。逆に言えばそれが凄いところなんだけれども、ウチとしては助かった」。
以前、松田監督は「力任せの試合をしてしまうと、その後もサッカーが荒れてしまう」と語っていた。3日後の決勝、さらにその先を見据えて、あくまで質を伴ったサッカーに徹したのかもしれない。ベテランを下げて、若手をピッチに残した選手交代を振り返ると、そんな気もしてきた。
勝負に徹した岡山湯郷は、まだまだその域には達していない。「見ている人たちには決して面白い試合じゃなかったと思います」と本田監督。ただし、成長途上のチームには結果を出すことが何よりの良薬。日テレOGの藤井は「奇跡が起こりましたね。ウチのチームにはコクリツでサッカーをやるのが始めてという子が多いんです。私もその子たちと一緒にそこへ行けるというのが嬉しいです」。
第28代女王の座はTASAKIと岡山湯郷の2チームで争われることになった。
初挑戦となる宮間は「タイプが似ているので難しい試合になると思います。経験したことのない選手たちが多いのでびびっちゃうかも知れませんが、決勝戦として恥ずかしくないプレーをしたいです」。
3年ぶりのタイトルを目指すTASAKIの磯崎は「(岡山湯郷が)日テレに勝った、力のあるチームであることは事実だし、受けて立つ気持ちも、そんな気持ちを持つ余裕も全くありません。自分たちの気持ちを引き締めて、川上の分も戦っていきたいと思います」。
決勝戦は2007年1月1日の10時30分、聖地国立競技場でキックオフの笛を聴く。
| (日テレ・ベレーザ) | (岡山湯郷Belle) | |||||||
| GK: | 小野寺志保 | GK: | 福元美穂 | |||||
| DF: | 中地舞(H.T/川上直子)、岩清水梓、豊田奈夕葉、宇津木瑠美) | DF: | 安田邦子、藤井奈々、城地泰子、佐藤シェンネン | |||||
| MF: | 酒井與惠、近賀ゆかり、伊藤香菜子、澤穂希 | MF: | 北岡幸子、田畑沙由理、中田麻衣子、宮間あや | |||||
| FW: | 大野忍、荒川恵理子(H.T/永里優季) | FW: | 田中静佳、加戸由佳 | |||||
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