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 第28回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
常に先手を取り続けた浦和だったが…。
2度のロスタイムの同点弾。TASAKIが決勝戦へ
第28回全日本女子サッカー選手権大会 準決勝 TASAKIペルーレFCvs.浦和レッズレディース

2006年12月29日(金)10:00キックオフ 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 観衆:600人 天候:晴
試合結果/TASAKIペルーレFC2−2(PK4−3)vs.浦和レッズレディース(前0−1、後1−0、延前0−0、延後1−1)
得点経過/[浦和]北本(9分)、[TASAKI]下小鶴(89分)、[浦和]若林(106分)、[TASAKI]下小鶴(109分)


取材・文/中倉一志

「今までサッカーをやってきて初めての経験」。試合後、磯ア浩美は激戦を振り返った。2度に渡るロスタイムの同点ゴール。そして、急遽PK戦のGKとしてゴールを守った阪口の3本連続セーブ。いくらサッカーが何でもありのスポーツとは言え、全てが重なり合うことなど爪の垢ほどの確率もない。既にベテランの域に達している磯アであっても経験したことがないのは当然のことだったろう。しかし、TASAKIはそれを現実のものにした。

 確かに、ここまで劇的な勝利を挙げることは誰も予想はしていなかっただろう。だが、TASAKIの今大会の戦いぶりを見ていると、それは必然であるようにも思える。周りとの比較ではなく、自分たちがサッカーをすることだけに高度に集中してプレーを続ける。それは劣勢のときも、優勢のときも変わらない。欲、期待、不安、そういったものから開放され、ただ勝負だけに徹するクリアな気持ち。TASAKIからは、そんな雰囲気が漂っている。



安藤は後半の途中でピッチを退いた。
 浦和の布陣は、中央に窪田飛鳥を置き、その下に安藤梢と北本綾子を並べる4−3−3の布陣。前線から激しくボールを追いまわしてTASAKIにプレッシャーをかけて自由を奪う。隙あらば、いつでもボールを奪ってゴールを決める。そんな浦和の思いがピッチの上に充満する。「来るのは分かっていたんですけど、それをそのまま受けていた」(下小鶴綾・TASAKI)。そして9分、その勢いのままに浦和が先制点を奪う。決めたのは、この日素晴らしい切れ味を見せていた北本綾子だった。

 自陣で得たFKのチャンスに笠島由恵が北本にフィード。すると北本は鋭く反転して裏へ飛び出した。この時点で勝負あり。北本の狙い済ました右足でのシュートがゴールネットを揺らした。その後も浦和のペースで試合が進む。しかし、TASAKIに慌てた素振りはない。押し込まれながらも決してゴール前への侵入を許さない。そして30分、スローインからのリスタートから決定機を作り出すと、ここからペースを引き寄せる。起点となるのは鈴木智子。確実なポストプレーでリズムを刻む。

 だが、決勝進出に向けて高い集中力を発揮する浦和も粘る。TASAKIが主導権を握りそうにそうになると盛り返し、そしてピンチにはFW2人だけを前線に残してゴール前を固めた。そんな浦和にTASAKIはゴールが奪えない。山郷のぞみのファインセーブに阻まれ、わずかにポストをかすめた。やがて2分間のロスタイムも刻々と過ぎ、残るはワンプレー。ほとんどの観客が浦和の勝利を信じた。ところが、次の瞬間、下小鶴綾が値千金の同点ゴールを決める。セットプレーから生まれたゴール前の混戦で、大谷未央が折り返したボールを押し込んだ。



延長戦。再びロスタイムに追いついたTASAKI
 延長戦は、同点ゴールに追いついたTASAKIのペース。ボールを完全に支配して守りを固める浦和に迫る。しかし、ここでも先にゴールを奪ったのは浦和。延長後半の106分。TASAKIのわずかな連携ミスをついて若林エリが最終ラインの裏へ飛び出して右足を一閃。そしてゴールネットが揺れた。守りを固めてカウンターに徹する延長戦で浦和が放ったシュートはこの1本だけ。だが、今度こそ浦和が逃げ切るというムードがスタジアムを包む。

 しかし、またロスタイムだった。右からのCK。中岡麻衣子が蹴ったボールに頭を合わせたのはファーサイドに詰めていた下小鶴。ゆっくりと、しかし確実にボールがゴールに吸い込まれた。そしてPK戦。仲井昇監督(TASAKI)は、ここでGK経験のあるフィールドプレーヤーの阪口夢穂をゴールキーパーに指名。普段からGKの練習をしているとは言うが、大胆な起用。阪口の度胸に決勝進出を委ねた。そして、その期待に阪口が応える。

 3−3で迎えた4本目。まず柳田美幸のPKを右手一本でセーブ。続くTASAKIのキッカー鈴木が外してしまうが、浦和の高橋彩子が放ったPKを右へ横っ飛びしてスーパーキャッチ。再びTASAKIは中岡が外してリードをふいにするが、阪口は動じない。そして今度は左へ鋭く飛んで百武江梨のPKをがっちりと抱え込んだ。土壇場で見せて阪口の3連続セーブ。そして5人目に登場した甲斐潤子が確実にゴールネットを揺らす。両手を突き上げて阪口に駆け寄るTASAKIイレブン。TASAKIはあまりにも劇的な展開で決勝戦への切符を手にした。



TASAKIは阪口が3本をストップ。
「国立に行こうと、みんなで最初から言っていたんで、気持ちが切れてなかったのが結果的に自分が入れられことにつながったと思います」とは、劇的なロスタイムの同点ゴールを2度も決めた下小鶴。実力はもちろん、優勝へ向けての勢いのようなものをチームは招き入れている。「2点目が余計だったんですけれど、最後はやってくれると持ってました。1戦目、2戦目と内容が伴ってきた部分があって、今日は先制をされても焦ることなく冷静に対応してくれたんで、いい試合が出来ました。次につながると思います」(仲井監督)。TASAKIは国立で3年ぶりの優勝を目指す。

「最後までみんな頑張ったと思います。PK戦は仕方ありません。リーグ戦も2位だったし、チャンピオンでないということは課題がいくつもあるということですから、それをひとつ、ひとつ解決して、もっといいチームにならないといけないと思います」。穏やかな表情で試合を振り返ったのは永井良和監督(浦和)。悔しくないはずはない。しかし、選手たちの頑張りは見事。PK戦はあくまでも次のラウンドーの進出チームを決定する方法。彼女たちは負けていない。この悔しさは2007年シーズンで晴らせばいい。






(TASAKIペルーレFC) (浦和レッズレディース)
GK: 佐々木香織 GK: 山郷のぞみ
DF: 甲斐潤子 磯ア浩美 下小鶴綾 佐野弘子 DF: 木原梢 田代久美子 笠島由恵 岩倉三恵(54分/森本麻衣子)
MF: 阪口夢穂 新甫まどか(102分/白鳥綾) 中岡麻衣子 山本絵美(87分/田頭陽子) MF: 高橋彩子 百武江梨 柳田美幸
FW: 鈴木智子 大石沙弥香(64分/大谷未央) FW: 安藤梢(76分/法師人美佳) 窪田飛鳥(87分/若林エリ) 北本綾子
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