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 第29回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
高い位置からボールにアプローチし、粘り強い守備を発揮した高槻。
積極的な守備が生んだ勝利。高槻が伊賀を下してベスト8へ。
第29回全日本女子サッカー選手権大会 3回戦 スペランツァF.C.高槻vs.伊賀FCくノ一

2007年12月22日(土)11:00キックオフ 広島県営広島スタジアム 観衆:200人 天候:雨
試合結果/スペランツァF.C.高槻2−1伊賀FCくノ一(前2−0、後0−1)
得点経過/[高槻]相澤(12分)、北岡(22分)、[伊賀]大歯(46分)


取材・文/中倉一志

 1週間前。伊賀はおそらく今シーズンで最も厳しい試合を戦っていた。市原・千葉との間で行われたなでしこリーグ入れ替え戦。常に先手を行きながら追いつかれること2回。延長戦を戦っても決着はつかず、PK戦を5−4で制して、ようやくディビジョン1残留を決めた。何かを得るための戦いではなく、何かを失わないための戦いは、結果にかかわらず身も心も大きく削られるもの。その影響を残したままで、再び下位リーグの挑戦を受けるシチュエーションは厳しいと言わざるを得ない。

 高槻も1週間前に厳しい戦いを演じたことでは同じだった。全日本女子サッカー選手権2回戦で迎えた相手は、大学女子サッカー界をけん引する女王・日本体育大学。先制しながら追いつかれ、PK戦で決着をつけたのは伊賀と同じ展開だった。しかし、次なる相手は上位リーグの伊賀。守る立場から挑戦する立場への変化は、苦しい気持を解放させたはずだ。敗れることを恐れる必要はなく、自分たちのすべてをぶつけるだけ。それは高槻に与えられた大きな武器であったことは間違いない。



宮本ともみ(白・中央)は積極的なプレーで仲間を鼓舞した。
 立ち上がりは風上に立つ伊賀が仕掛けた。開始早々の2分には小野鈴香が決定的なシュートを放ち、続く5分には四宮由美子のシュートが左ポストを叩く。高い位置から素早くプレッシャーをかけてボールを奪い、サイドへ展開して縦に駆け上がるのは伊賀の得意のパターン。明らかに戸惑いを見せる高槻はクリアもパスも簡単に相手にひっかける苦しい戦いを強いられた。やはりカテゴリーの差は大きい。それを感じさせる立ち上がりだった。

 しかし、高槻はこの時間帯を凌いだことで落ち着きを取り戻す。「相手はディビジョン1のチーム。プレッシャーも含めて、すべてのプレーが速いというのは分かったいたので、まずは守備からしっかり抑えにかかって、そこからということを最後まで続けようと言っていました」(細田真砂智監督・高槻)。前へ出てくる相手を中盤で受け止め、サイドへ追い込んで挟み込む。そして、ワンボランチの宮本ともみの両側にできるスペースを使ってカウンターを狙った。

 そして、先制点が高槻に生まれた。時間は12分。ハーフウェイラインを少し超えたところで、相手のミスからボールを奪った相澤舞衣が強引にロングシュートを放つ。ボールは大きな弧を描いてゆっくりと、しかし、絶妙なコースへと向かう。慌てて飛びつくGK磯上まみ。しかし、その両手をすり抜けてボールはゴールへと吸い込まれた。さらに22分、高槻は直接FKで得たチャンスから、ゴール前にこぼれたボールを北岡幸子が蹴り込んで追加点。アグレッシブな守備で伊賀の攻撃を封じ、2本のシュートで奪った2得点。高槻はこれ以上ない展開で前半(40分ハーフ)を折り返した。



流れを変えた井坂(白15)。一時はチームに勢いをもたらしたが・・・。
 このままでは終われない伊賀は後半開始から尾原亜由香に代えて井坂美都を投入。その井坂がいきなり見せた。42分、左サイドのスペースへ飛び出すと、最後はGKもかわして無人のゴールへシュート。ボールはわずかにポストの右へそれたが、試合の流れを変えるには十分すぎるプレーだった。持ち味である縦への突破力を生かしてDFラインの裏へ何度も飛び出していく井坂。高槻の守備網に混乱が生じた。

 そして46分。堤早希からのパスを受けた井坂が左サイドを突破。マイナスのクロスボールを送ると、ゴール前に飛び込んできた大歯裕子が左足で鮮やかなボレーシュート。次の瞬間、ゴールネットが大きく揺れた。高槻にはまだ1点のリードがあったが、両チームの間にある地力の差、試合の流れを考えれば互いの立場は、この時点で完全にイーブン。勝負を決めるであろう次の1点をめぐっての攻防が繰り広げられる。どちらかと言えば、1点を返した伊賀に勢いがあるようにも思われた。

 しかし、この攻防を制したのも高槻だった。失点直後は、クリアボールを拾われて波状攻撃を受ける時間帯が続いたが、時間の経過とともに落ち着きを取り戻すと、前半同様、伊賀が前に出てくるところを確実に捕まえ、両サイドで相手を挟み込んで、伊賀の特徴であるサイドからの攻撃を許さない。ボールに対する反応も衰えず、ルーズボールには必ず先にボールに触った。そして、残り10分を切ってからの伊賀の猛攻も確実にしのいで1点差を守り切り、準々決勝にコマを進めた。



巧みなポジションとカバーリングを見せた奥田亜希子(青・左)。
「追う所と取る所がはっきりしていたし、サイドのところにサンドをかけられる状況を作るということがチームとして徹底できていた。それがぼやけた時間帯に裏を取られて1点を失いましたけれど、その部分は終始できたのかなと思っています」(細田真砂智監督・高槻)。試合開始直後。高槻が先制点を奪った後。そして、伊賀が1点差に追いついてから。試合の流れが伊賀に傾きかけた時間帯が3度あった。しかし、守備意識を徹底できたことで、高槻はいずれの時間帯も乗り切った。

 「(1点を取られた後)いつもだったら、あそこで崩れてたんですけれども、守れるという自信があったと思いますし、気持ちが乗ってきていましたので、その部分が一番大きかったと思います」(同監督)。苦しい時間帯にも決してラインを下げずにボールに向かっていくことを徹底した高槻。狙い通りのサッカーで勝利をもぎ取った一戦だった。次なる相手はTASAKIペルーレ。伊賀との戦い同様、アグレッシブな守備で戦いを挑む。

 一方、「相手の方がしたたかにボールを奪いに来ていて、こちらはミスが多くて、思うような攻撃ができなかったということですね。立ち上がりに何度かチャンスはあったんですけれども、それを決め切れなかったというのも、ひとつの敗因でした」とは諸岡正吾監督(伊賀)。「僕を含めて力のなさがはっきりしたシーズンだったと思います。もう少し立て直さないと来シーズンは難しいと思います。課題は全てですね。攻撃においても、守備においても、もっと、もっと個々の能力を上げていかないと」と続けた。不本意のままに過ごした1年。伊賀にとって、来年は仕切り直しのシーズンになる。


(スペランツァF.C.高槻) (伊賀FCくノ一)
GK: 海堀あゆみ GK: 磯上まみ
DF: 有間由貴子 中鍋美里 奥田亜希子 高見恵子 DF: 鈴木麻友(63分/村上真理) 吉泉愛 清原祐子 庄子菜摘
MF: 伊丹絵美 北岡幸子 相澤舞衣 小野村亜矢 MF: 宮本ともみ 四宮由美子 堤早希 尾原亜由香(HT/井坂美都)
FW: 櫻井真理子 中江真紀(49分/金房夏希) FW: 大歯裕子 小野鈴香
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