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 第29回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
TASAKIの1トップ・坂井優紀(ロゼ)。
淡々と、そしてしたたかに。TASAKIがベスト4。
第29回全日本女子サッカー選手権大会 準々決勝 TASAKIペルーレFCvs.スペランツァF.C.高槻

2007年12月24日(月)11:00キックオフ 広島県営広島スタジアム 観衆:人 天候:晴
試合結果/TASAKIペルーレFC2−0スペランツァF.C.高槻(前2−0、後0−0)
得点経過/[TASAKI]大石(6分)、山本(39分)


取材・文/中倉一志

「出来れば優勝したいんですけれども、鈴木と大谷が本調子ではないので、そこがどれだけ戻ってこれるかがポイントだと思います」。悔しい思いをしたリーグ戦の借りを返したいのではないか。そんな質問を浴びせると、仲井昇監督(TASAKI)意外なほど淡々とした口調で話してくれた。コンディション不良だけはどうしようもない。ジタバタせずに復帰を待つだけと割り切っているからなのかも知れない。その語り口に象徴されるかのように、チームの戦い方も淡々とした感じを受ける。

 しかし、それは気持ちが入ってないということではない。3回戦は冷たい雨が降り続ける中での試合。そして、この日は強風が吹く中での試合。コンディションは決していいとは言えないのだが、ミスを最小限に抑えてボールをポゼッションし、高い位置からプレスをかけて、天候に左右されずに相手を押し込んで試合を進める。相手の反撃も、ピンチになる前に潰してしまうしたたかさもある。むしろ、やるべきことを当たり前に、そして淡々とこなすところに、チームの底力のようなものが感じられる。

 鈴木智子の欠場で前線にボールが収まらないために両サイドが上がることができず、90分間にわたって労を惜しまずにスペース飛び出し続ける大谷未央を欠いては、チャンスの芽を広げることも叶わない。ボール支配率で大きく相手を上回るものの、ゴールチャンスは思ったほど多くないのはそのためだ。こういう展開が続くとリズムを崩して相手に付け入る隙を与えてしまうものだが、終わってみれば、危ないシーンを作られることもなく勝利を手にしている。



攻めるTASAKI。守る高槻
 それは吉備国際大学との3回戦でも、この日の高槻との準々決勝でも変わりはなかった。この日の先制点は6分。GK佐々木香織からのロングフィードを受けた大石沙弥香が競り合うDFを振り切って左足を一閃。ボールがゴールを捉えた。その後は前に出るものの粘る高槻の前にチャンスらしいチャンスは作れない展開が続いたが慌てる素振りを全く見せず。そして39分、ゴール前にこぼれたボールに反応した山本絵美が頭で浮かせてゴールを捉えた。

 後半は風上に立つ高槻の前に自陣でプレーする時間が増えた。放ったシュートはわずか4本に留まった。しかし、高槻のペースに見える後半も、相手に打たせたシュートは同じく4本だけ。後半立ち上がりの53分に小野村亜矢に際どいシュートを浴びた以外では、チャンスらしいチャンスを与えることはなかった。「高槻の健闘」という印象を残す試合も、ゲームスタッツを見ればすべての面でTASAKIが上。負ける要素のない試合だった。

「これが力の差」。そう言ってしまえばそれまでだが、それだけではなく、どこか達観した雰囲気を漂わせている。チャンスが生まれないのならば、ゲームをコントロールしながら、チャンスが来るのをじっと待ち続ける辛抱強さがある。その戦い方は、万を持して鈴木、大谷の復帰を待っているというべきか。それとも、調子が上がらないために渋々我慢しているというべきか。準決勝でどんな戦いを見せるのかが興味深い。



高槻のアグレッシブな守備はこの日も健在。素早く囲い込む。
 さて、一方の高槻。「まずはしっかりとした守備から入ってカウンターを狙う」(細田真砂智監督・高槻)という戦い方は3回戦の伊賀戦と同様。そして、この日も、決してラインを下げずにボールを追い、局面では厳しく体を寄せた。ボールの取りどころが統一された守備は狙い通りに機能したといっていいだろう。2つの失点シーン意外には、ほとんど危ないシーンを作られることはなかった。逆に言えば、狙い通りに進めながらも、最後のところを突き詰められないとも言えるのだが、互いの間にある力の差を考慮すれば、それもやむを得ないことだろう。

 堅実な守備を可能にしているのは中央のラインがしっかりしているからだろう。最終ラインをコントロールする奥田亜希子は、的確なポジショニングとカバーリングを見せるだけではなく、ここぞという時には高い位置に出て相手の起点を潰す。中盤の底では北岡幸子が相手の攻撃の芽を着実に摘み、豊富な運動量を誇る小野村は、攻撃時にスペースへ飛び出してチャンスを広げるばかりではなく、2列目で献身的に守備のために走り回る。

 課題は奪ったボールをどうやって攻撃につなげるかということだろう。「奪ってからのビルドアップや、早めの連動性が出てくれば・・・。それは今シーズンでの課題でもあった」と細田監督も振り返る。攻撃の要である相澤舞衣を累積警告で欠いた影響もあるのだが、3回戦の伊賀、準々決勝のTASAKI相手に機能した守備力と比較すると物足りなさは否めない。後方からのフィードにやや難があるのも気にかかるところだ。



ペナルティエリア深くまで入り込む小野村亜矢(白)
 それでも、準々決勝まで駒を進めた全日本女子選手権は、来シーズンにディビジョン1復帰を目指すチームにとっては貴重な経験になったはずだ。「来シーズンもディビジョン1復帰というのは絶対の目標。今シーズンはディビジョン1とディビジョン2の違いに苦しんだというのがあったが、全日本選手権のような戦いができれば、ディビジョン1も遠いところではないと思う」と細田監督も手応えを口にする。

 ディビジョン1のチームと直接肌を合わせたことで、課題も収穫がはっきりとしたことが大きかった。収穫はもちろん守備。今シーズンのディビジョン2でも2番目に少ない失点数を誇ったが、その守備はディビジョン1でも十分に通用することは確認できたはずだ。その一方で、課題は勝負強さを身につけること。「TASAKIさんなんかは勝負どころを全員が意識している。それと比較すると、まだ勝ち慣れていないところもあるので、そういう部分での壁は大きい」と細田監督もこの日の試合を振り返った。

「ディビジョン1に上がることが目標ではなくて、戦えるチームになれないと上がっていけない。そういう意味では戦えるチームになることを目標にしなければいけない。それを考えると、もっと細かい部分、ビルドアップとか、トラップとか含めて技術的な部分の向上が必要だし、運動量も増やしていかなければいけない」。この日でシーズンの全日程を終えた高槻は束の間の休息に入る。そして心身ともにリフレッシュした後、再びディビジョン1復帰へのチャレンジが始まる。


(TASAKIペルーレFC) (スペランツァF.C.高槻)
GK: 佐々木香織 GK: 海堀あゆみ
DF: 甲斐潤子 磯ア浩美 下小鶴綾 佐野弘子 DF: 有間由貴子(85分/金房夏希) 中鍋美里 奥田亜希子 高見恵子
MF: 阪口夢穂 白鳥綾 中岡麻衣子(87分/田中明日菜) 大石沙弥香(78分/清原万里江) 山本絵美 MF: 伊丹絵美 北岡幸子 石野由果(HT/松下紀美) 小野村亜矢
FW: 坂井優紀(67分/大谷未央) FW: 櫻井真理子 中江真紀(61分/櫻田有幾子)
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