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 第31回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
広島で行わけた準々決勝では、ディフェンディングチャンピオンが、狭山の挑戦を受けた。
苦しみながらもINACが勝利。狭山はDiv.1での戦いに手応えを掴む。
第31回全日本女子サッカー選手権大会 準々決勝 ASエルフェン狭山FC vs.INAC神戸レオネッサ

2009年12月23日(祝)11:00キックオフ コカコーラウエスト広島スタジアム 天候:曇
試合結果/ASエルフェン狭山FC 0−2 INAC神戸レオネッサ(前0−1、後0−1)
得点経過/[狭山]田中(27分)、鈴木(81分)


取材・文/中倉一志

 3回戦から中2日で行われる準々決勝。コカコーラウエスト広島スタジアムで行われた第1試合にディフェンディングチャンピオンのINACレオネッサが登場した。昨年の全日本女子選手権決勝戦で味わった悔しさ晴らすべく臨む大会に、「我々は元旦に国立に行くことが目標ではなく、そこで勝つことが目標」と田渕径二監督(INAC)は話す。厳しいリーグ戦を戦い抜き、心身ともに疲労の残るチーム状態は決して良くないが、その中で勝ち進んでこそ頂点が見えてくる。

 そのINACに挑戦状を叩きつけるのは、来シーズンからの、なでしこリーグDiv.1昇格が決まっているASエルフェン狭山FC。同じく昇格が決まっている伊FCくノ一、福岡J・アンクラス同様に、現時点での自分たちの力がDiv.1相手にどこまで通用するのか、どの部分に力の差があるのか、厳しいDiv.1を戦い抜くための課題は何かを確かめる貴重な機会になる。まずは、自分たちのスタイルを正面からぶつけることが、この大会で求められていることだ。



先制点を挙げた田中明日菜(左)。中盤のキーマンとしてゲームを作った。
 開始間もない4分、狭山は岩澤和のスルーパスを受けた薊理絵がゴール前へ飛び出して好機を演出。シュートまで持ち込むことはできなかったが、ディフェンディングチャンピオンに対して、少しも臆していないことを示す。
 しかし、INACは動じない。そして、ここから主導権を握って一方的に攻め込んで行く。14分に最初の決定機を迎えると、そこからは決定機の連続。クロスバーに2本、ポストに1本跳ね返されてゴールを奪うには至らないが、Div.1の力を見せつけるかのように狭山を攻め立てる。

 互いの間に存在するのは、スピードとフィジカルの差。攻守の切り替えの速さ、次のプレーにうつる速さ、そして相手に対するアプローチの速さの差はいかんともしがたく、狭山は防戦一方。1対1の局面や、ハイボールの競り合いもINACに制されて、クリアボールを簡単にINACに渡してしまう。ボールを持って前を向く場面でも、周りの動き出しが遅れてボールホルダーが孤立してボールを奪われるの繰り返し。ゴールを守るので精一杯の時間帯が続く。

 そんな流れが続いた27分、INACが先制点を奪う。右サイドを駆け上がった川澄奈穂美のクロスボールがペナルティエリア内にこぼれたところを、田中明日菜の右足が捉えた。狭山は競り合ったDFが体を寄せてはいただけに惜しまれる場面だったが、足元のボールを素早く確保した時点で田中の勝ち。この先制点で、一気にINACが勝負を決めるかに思われた。
 ところが、粘り強く戦う狭山は追加点を許さず。そして、前半を1失点に抑えたことが、後半の展開に影響を与えることになる。



途中出場の鈴木(左)は貴重な2点目をゲット。
 後半もINACが主導権を握る展開で試合が開けた。しかし、前半はボールを繋いでいたINACがシンプルにアーリークロスを放り込むシーンが増えていく。
「前半の途中から雨が降り出して、ボールが中々収まらなくて、ミスも多くなってきたので、相手のクロスの守備が少し甘かったこともあって、早めに入れてみるかということだった」(田渕監督・INAC)
 そして、田渕監督はもうひとつの理由を口にする。
「もう少し前半に点が取れていれば別だったんですけれど、相手も後半から少し前がかりになっていて、そこでミスが起こるとしんどいなということで、シンプルに前の3枚に当てて動かして行こうかという話はしていました」

 確かにハイボール攻撃は狭山を苦しめていた。INACが制空権を握っていたことを考えれば、リスクを避けてゴール前に放り込むのも選択肢のひとつだったろう。しかし、INACはこぼれたボールを有効に展開できず、チャンスを作ることが出来ずにリズムが単調になり、それに呼応するように、狭山が少しずつリズムを刻みだした。
 ボランチの佐藤舞が高い位置に出てボールに積極的に絡み、トップ下の岩澤、降りてくる齋藤有里がボールを収め、左サイドに展開して薊理絵のスピードを使う。狭山の最大の決定機は58分。ロングボールの競り合いから、甲斐潤子と入れ替わって裏へ飛び出した佐藤がゴール前でフリーになったが、シュートがゴールを捉える事が出来なかった。

 INACは81分、途中出場の鈴木智子が2点目を奪ったが、それでも狭山のアグレッシブさは消えず。むしろ、残り5分を切ってからは、狭山がグイグイと前に出てINACを自陣内に押し込んで相手を慌てさせる。最終的には何とか守りきったINACが勝ち名乗りを上げたが、狭山の頑張りが印象に残った試合だった。



左サイドをスピード豊かに駆け上がるのが薊理絵の武器。来シーズンの活躍が期待される。
 それでも、INACにとってはまずは勝ち進むことが最優先。「公式戦からしばらく離れていましたが、ここ4日間で公式戦が2本入ったので、少しずつチーム状態を上げていければと考えています。その中で、しっかり結果は出せたので、そこは良かったかなと思います」と田渕監督は試合を振り返った。
 そして、続く準決勝ではリーグチャンピオンの浦和と対戦する。リーグ戦では1分3敗。3得点10失点の相手に「レギュラーシーズンではボコボコにやられた」(田渕監督)相手だ。「多分、消耗戦になるのかなと思いますので、できれば、失点をしないように殴り合うというところへ持っていければと思います」。田渕監督は、そう話してスタジアムを後にした。

 一方、「今のエルフェンとしてはやれるだけのことはやれたと思います。要所、要所で悔しいところはありますけれど、最後までみんな勝つ気だったし、次につながる敗戦だと思います」と話すのは岩澤(狭山)。そしてDiv.1との差、そして課題を次のように話した。
「相手はチャンスをきちんと決めて、こちらは決められなかった。この差は大きいと思います。今日はハイボールで全部負けていたし、運動量でも負けていたし、1対1の体の強さでも負けていたし、フィジカルで課題が多いかなと思います」

 試合後、チームを牽引する田中桜、佐藤舞、そして岩澤和の3人が、身振り手振りを交えながら、自分たちの課題と、どうやれば現時点での差を埋めることが出来るのかを、いつまでも話し合っているのが印象的だった。


(ASエルフェン狭山) (INAC神戸レオネッサ)
GK: 大谷明香 GK: 海堀あゆみ
DF: 田中桜 笠島由恵 関根めぐみ 安奈希沙 DF: 藤村智美(87分/坂井優紀) 柳井里奈 甲斐潤子 ジナ
MF: 櫻田有機子(60分/櫛笥葵) 佐藤舞 増田明子(HT/斉藤登美子) 薊理絵 岩澤和 MF: 原歩 那須麻衣子 田中明日菜
FW: 齋藤有里 FW: 川澄奈穂美(58分/中島依美) 高瀬愛実(76分/鈴木智子) 米津美和
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